デジタル大辞泉
「鳰鳥の」の意味・読み・例文・類語
におどり‐の〔にほどり‐〕【×鳰鳥の】
[枕]
1 鳰鳥が水に潜き、長くもぐる意から、「葛飾」「息長」に掛かる。
「―葛飾早稲をにへすとも」〈万・三三八六〉
2 鳰鳥が雌雄並んで水に遊ぶ意から、「なづさふ」「二人並びゐ」に掛かる。
「―なづさひ来しを人見けむかも」〈万・二四九二〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
におどり‐の にほどり‥【鳰鳥の】
枕
①
カイツブリがよく水にもぐることから、(イ)「かづく」にかかる。
※
古事記(712)中・
歌謡「いざ
吾君(あぎ) 振熊
(ふるくま)が 痛手負はずは 邇本杼理能
(ニホドリノ) 淡海
(あふみ)の海に 潜
(かづ)きせなわ」
(ロ) 転じて、同音の
地名「葛飾
(かづしか)」にかかる。
※
万葉(8C後)一四・三三八六「爾保杼里能
(ニホドリノ)葛飾早稲をにへすともその愛
(かな)しきを外
(と)に立てめやも」
(ハ) 息が長い意で、地名「息長(おきなが)」にかかる。
※万葉(8C後)二〇・四四五八「爾保杼里乃(ニホドリノ)息長河は絶えぬとも君に語らむ言(こと)尽きめやも」
② カイツブリが水に浮かんでいるところから、「なづさふ」にかかる。
※万葉(8C後)一一・二四九二「思ひにし余りにしかば丹穂鳥(にほどりの)なづさひ来しを人見けむかも」
③ カイツブリは繁殖期には雌雄が並んでいることが多いので、「二人並びゐ」にかかる。
※万葉(8C後)五・七九四「爾保鳥能(ニホどりノ) 二人並び居 語らひし 心背きて 家離(ざか)りいます」
[
補注]①②③に
挙例の万葉歌は、カイツブリの
生態を様々にとらえて
修辞に利用しているので「葛飾」に懸かる場合を除き、
枕詞でも
直喩の
性格が強い。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報