改訂新版 世界大百科事典 「黒潮古陸」の意味・わかりやすい解説
黒潮古陸 (くろしおこりく)
西南日本外帯南半の四万十(しまんと)帯(区)堆積域の形成時,南方に存在したとされる陸地(紀州四万十帯団体研究グループ,1970提唱)。四万十帯の白亜紀,古第三紀のフリッシュ型砕屑(さいせつ)性堆積物は,堆積学的解析によると,主として北側の内帯から側流ないし軸流により供給されたが,南からの側流を示す古流系も各地で認められ,レキ岩層の礫(れき)の構成や放射年代から,黒潮古陸には白亜紀酸成火成岩類などのほかに,より古期のオーソコーツァイトもあったとされる。オーソコーツァイト層の形成には乾燥大陸的環境下の砂漠風成(ないしそれに由来する縁辺海浜成など)の条件が必要とされるので,大規模な大陸の存在が推定された。この礫は紀伊半島,四国,九州,沖縄にわたり延長1500kmの地域に点々と発見されている。しかし大規模な大陸状況が新生代中ごろまで継続していたのでは,それ以降の消滅の過程が説明しにくい。そこで,オーソコーツァイト層形成当時(おそらく先カンブリア時代後期と推定されている)に存した大陸も,後にその一部分が微大陸片(群)として分離・移動し,白亜紀以降には東アジア東縁に到達し,島弧型火成活動を伴う島弧系の一部に,異地性要素としてくりこまれ,砕屑物供給源となったとも考えうる。なお,西南日本の黒潮古陸と対照するような,古第三紀当時の親潮古陸の存在が東北日本と日本海溝との間の現在の前弧域で深海掘削のデータから提唱されている(ヒューネ,奈須紀幸ら,1978)。
執筆者:市川 浩一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報