日本大百科全書(ニッポニカ) 「四万十帯」の意味・わかりやすい解説
四万十帯
しまんとたい
日本の地体構造区分上、西南日本外帯および関東山地における区分名の一つ。関東山地から、赤石山脈、紀伊半島、四国、九州、沖縄まで、15キロメートルから100キロメートルの幅で、延長1500キロメートルにわたって帯状に分布する。「四万十」は高知県の四万十川に由来する。
[村田明広 2016年2月17日]
区分と境界
四万十帯はその北限を仏像構造線(衝上(しょうじょう)断層)で境されており、三宝山(さんぼうさん)帯(秩父(ちちぶ)帯南帯)の石灰岩卓越層に衝上されている。四万十帯の地層は、一部では直接、秩父帯北帯の堆積岩(たいせきがん)類や三波川(さんばがわ)帯の変成岩類と接する。
四万十帯は、おもに白亜系からなる北帯と、古第三系~新第三系下部中新統からなる南帯とに分けられる。なお、北帯を狭義の四万十帯、南帯を瀬戸川帯とよぶこともある。両者の境界は衝上断層あるいは逆断層であることが多く、赤石山脈では笹山(ささやま)構造線、紀伊半島では御坊(ごぼう)‐萩(はぎ)構造線、四国では安芸(あき)構造線、九州では延岡(のべおか)衝上断層(延岡構造線)とよばれている。延岡衝上断層は水平に近いほど低角であるため、クリッペやフェンスターが知られている。
[村田明広 2016年2月17日]
地層
北帯の白亜系は、紀伊半島では日高川層群、九州では諸塚(もろつか)層群など、それぞれの地方によって異なる地層名でよばれている。これらの地層は、玄武岩質火山岩類、チャートや砂岩をブロックとして含むメランジュ、砂岩および砂岩泥岩互層からなっているが、量的には砂岩がもっとも多い。南帯の古第三系~新第三系下部中新統も、九州で日向(ひゅうが)層群、四国で室戸(むろと)半島層群など各地方ごとに異なる地層名でよばれている。南帯の地層も玄武岩質火山岩類や遠洋性の珪質(けいしつ)泥岩をブロックとして含むメランジュと、砂岩および砂岩泥岩互層からなる。四万十帯に分布するこれらの地層はひとまとめにして四万十累層群とよばれる。
四万十帯の地層は、以前は地向斜堆積物とされていたが、現在では付加堆積物であると考えられている。玄武岩質火山岩類やチャート、珪質泥岩は海洋プレート上に堆積したもので、それらが、海溝に堆積した陸源性の砂岩や泥岩と混ざり合っている。なお、四万十帯には一部に浅海堆積物が分布しており、付加堆積物を覆って堆積した前弧海盆のものとされている。四万十帯の地層は付加堆積物であることが明らかになったため、四万十累層群という呼称を使わずに、四万十付加コンプレックスとよばれることが多くなってきた。
四万十帯の地層は、北帯・南帯のいずれでも、北傾斜・北上位であることが多く、北傾斜の衝上断層によって繰り返している。また、いくつかの衝上断層によって、デュープレックスという衝上構造の存在が報告されている。これは海溝堆積物が剥(は)ぎ取られて、陸側に取り込まれる底付け作用により形成されたものと考えられている。
[村田明広 2016年2月17日]