日本大百科全書(ニッポニカ) 「4WD」の意味・わかりやすい解説
4WD
よんだぶりゅーでぃー
4 wheel driveの略で、四輪のすべてに回転を伝えて走る自動車、およびそのシステム。四輪駆動ともよばれる。また全輪駆動ともいうが、前輪駆動と発音が同じため、JIS(ジス)(日本産業規格)では総輪駆動とよぶ。悪路、不整地、泥ねい地、荒野などの走破性に優れるところから、軍用、建設用、スポーツ用などに使われてきた。その歴史は古く、1903年にオーストリアのアウストロ・ダイムラーがつくった軍用の装甲自動車が最初とされている。
この種の悪路用の4WD車は、悪路では四輪を駆動して走るが、鋪装路上では後二輪(または前二輪)駆動に切り替えて走る。したがって一般にパートタイム4WDと称している。通常のアッカーマン式ステアリングをもった四輪車では、カーブでは前輪のほうが後輪より外を通るために、前輪のほうが走行距離が長く、したがってやや速く回らなければならない。ところが、これまでの4WD車では前後輪をまったく等速で回しているから、舗装路のような摩擦率の高い路面で急カーブを切ると、回転に無理が生じ、ブレーキをかけたように速度が落ちてしまう。これをタイトコーナー・ブレーキング現象といい、それを避けるために舗装路上は二輪駆動に切り替えていたのである(悪路ではスリップが大きいため、問題にならない)。
しかし最近では、乗用車でも4WDを採用するものが増えつつある。これは、四輪に回転を伝えて走ることによって、あらゆる道路情況下でスリップのない、安全な走行を図ろうとするものである。したがって乗用車ではつねに四輪を駆動するフルタイム4WD(パーマネント4WDともいう)が一般的である。フルタイム4WDでは前述のタイトコーナー・ブレーキング現象が問題になるが、通常の二輪駆動車で左右駆動輪の間に介在するデファレンシャルギヤ(差動歯車装置)を、前後軸間にも用いて解決する。これを一般にセンターデフといい、通常のデフと同じギヤ式や、シリコーンオイルを用いたビスカスカップリング式などがある。ギヤ式のセンターデフでは、泥ねい地などで前後いずれか一軸が空転すると、他方の回転が下がって脱出できなくなるので、手動または自動でデフをロックする装置がついている。今後もフルタイム4WDを採用する乗用車は増えていくであろう。
[高島鎮雄]