日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジープ」の意味・わかりやすい解説
ジープ
じーぷ
Jeep
四輪駆動の多目的乗貨兼用自動車の一つ。厳密には現在アメリカのジープ・コーポレーションが商標権と製造権をもち、日本では三菱(みつびし)自動車工業がライセンス生産をしている上記自動車の名称。類型車は多いが、ライセンス生産車以外はジープの名称は使用することができない。
もともと第二次世界大戦中に、陸戦での輸送、連絡、偵察、攻撃用として開発されたもので、B-17、B-29の両爆撃機、原子爆弾とともに、連合軍勝利の原動力となった。1940年、アメリカ陸軍の要請を受けたアメリカン・バンタム・カーズ社のカール・プロブストKarl Probst率いる技術陣が開発した。しかし同社は量産能力が低いため、ウィリス・オーバーランドとフォードにその改良型の大量発注が行われ、バンタムは対ソ連供与のためのものを生産した。ジープの名称は、多目的車を意味するgeneral purpose carの頭文字GPを、漫画映画ポパイに出てくる犬のJeeeeepという鳴き声にひっかけてできたといわれている。
第二次大戦終了後はウィリス・オーバーランド社が製造権を所有、民需用の生産を開始、あらゆる作業用として世界中で重用された。アメリカ以外でもカナダ、フランス、ベルギー、日本、インドなどで国産化され、軍用、民需用に用いている。一方、旧ソ連では、戦時中アメリカから供与されたバンタム・ジープをもとにGAZ61/67Bなどが生産され、それはGAZおよびUAZとして今日にまで及んでいる。さらにその技術を学んで、中国でも北京(ペイチン)、浙江(チョーチヤン)といった名称の「越野汽車」が生産されている。
このほか世界中で独自の設計になるジープ型車が生産されているが、なかでも有名で生産台数も多いのは、イギリスのランド・ローバー、ドイツのメルセデス・ベンツGバーゲン、日本のトヨタ・ランドクルーザー、日産・サファリなどで、それぞれ輸出もされ、軍用、民間用に用いられている。日本にはこのほかにも三菱・パジェロ、いすゞ・ビッグホーン、トヨタ・ブリザード、ダイハツ・ラガー、スズキ・ジムニーなど、中・小型のジープ型車があり、最近ではレジャー用の需要も多い。
ジープ型車は頑強なシャシーに簡潔で軽いボディーをもち、実質的な地上高も大きく、悪路の走破性が高い。四輪駆動は、良路では前輪駆動を切って後輪駆動のみで走るいわゆるパートタイム方式で、通常4段または5段の変速機に2段の副変速機をもつ。エンジンはとくに低速トルクの大きいものが用いられ、ディーゼルもある。登坂能力は通常の乗用車ではtanθ=0.5前後で、最高でも1に満たないが、ジープ型の強力なものでは1.5を超え1.75に達するものもある。
[高島鎮雄]