荒野(読み)こうや

精選版 日本国語大辞典 「荒野」の意味・読み・例文・類語

こう‐や クヮウ‥【荒野】

〘名〙
① あれはてた野原。あれの。
※続日本紀‐養老六年(722)閏四月乙丑「如部内百姓、荒野閑地、能加功力、収獲雑穀
今昔(1120頃か)五「秋は山々の荒野の紅葉の妙なるを見る」 〔書経‐説命下〕
② かたいなか。僻地(へきち)
開墾を勧めるために租税免除した土地後世、固定して幸谷、興屋などと書いて地名となったものもある。

あれ‐の【荒野】

〘名〙 荒れた野。耕されていない未墾の野。あらの。〔日葡辞書(1603‐04)〕

あらし‐の【荒野】

〘名〙 作物を作らないで荒れている畑。休耕中の焼き畑。

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デジタル大辞泉 「荒野」の意味・読み・例文・類語

あら‐の【荒野/×曠野】

荒れ果てている野。人けもなくて寂しい野原。あれの。
[補説]書名別項。→阿羅野
[類語]荒野こうや荒野あれの荒原原野枯れ野痩せ地荒れ地火山灰地

こう‐や〔クワウ‐〕【荒野】

あれはてた野原。あれの。あらの。
開発されていない土地。平安末から中世にかけて開墾・開発が奨励され、その開発地の、租税・雑役は免除された。
[類語]荒野あれの荒野あらの荒原原野枯れ野痩せ地荒れ地火山灰地

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改訂新版 世界大百科事典 「荒野」の意味・わかりやすい解説

荒野 (こうや)

日本の歴史上,野・原などの開墾可能な荒地をいい,元来は無主地。11世紀の初期国司国衙の収入減を克服するため,広範に生まれていた荒廃公田開発(かいほつ)を促し,荒野に準じた雑公事(ぞうくじ)免除などの特典を与えた。また,その私領化をも認めるようになった。これ以降,在庁官人らは,荒野・荒廃公田を含む広い領域を囲いこみ,活発な開発を行うようになった。この開発所領は,国衙に直結する徴税単位別名(べちみよう)・として位置づけられた。荘園領主も同時期に荘域内の荒野などの開発を盛んに行い,耕地の拡大と領域支配の確立につとめた。畿内では,12世紀末までに,荒野・荒廃公田の多くが開発された。辺境地域でも,開発の大きな波は13世紀前半まで続いた。この流れのなかで,12世紀前半には,荒野は開発の人をもって主となし,雑公事と3,4年の地利を免除することが世間の習いとなっていた。開発所領が再び荒野に戻った場合でも,この時期,その荒野は開発者相伝の私領と認められた。そのため,国衙領内の荒野の開発を申請したり,荒野を荘園として立券する場合に,ことさらに〈無主荒野〉〈常々荒野〉という表現を用いるようになった。しかし,この表現は,13世紀の初期にはほとんど見られなくなった。荒野の大規模な開発,荘園としての立券の終焉である。

 これ以後も,国衙領・荘園内の無主地である荒野の開発は続けられた。また,その一方で,私領としての荒野の譲与・寄進・売買が多くなった。なお,開発の困難な塩入荒野や大河川下流域の荒野の耕地化は,地頭・国人領主層あるいは商人らの手により,中世を通じて続けられた。そして,広島県の三原市旧本郷町から旧三原市にまたがる〈沼田千町田(ぬたせんちようだ)〉のように,広大な耕地が生まれた。
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普及版 字通 「荒野」の読み・字形・画数・意味

【荒野】こうや

あらの。

字通「荒」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の荒野の言及

【開発】より

…〈かいはつ〉ともいう。荒野・荒蕪地を開墾することは超時代的に行われたことであるが,とくに平安期から鎌倉期にかけての開発は,荘園制・領主制・中世村落など中世社会の骨格となる諸要素形成の基礎となった。用語面でも,初期荘園の開墾では〈墾開〉〈治開〉とかが用いられたが,平安初期になると〈開発〉がしだいに使用されるようになる。…

※「荒野」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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