内科学 第10版 「Wilson病」の解説
Wilson病(銅代謝異常症)
病因
細胞内銅輸送蛋白(ATP-7B)責任遺伝子のWilson病遺伝子(13q14.3に座位)の異常による.本症患者は,ATP-7Bの欠陥により,肝から胆汁中への銅排泄障害とセルロプラスミンが合成障害をきたす(図15-10-3).本症は,常染色体劣性遺伝性であり,男女両性に発病する.肝硬変,錐体外路症状,Kayser-Fleischer輪(角膜)を3大主徴として,肝レンズ核変性症(hepato-lenticular degeneration)ともよばれる.
神経症状他
1)肝症状:
黄疸,浮腫,腹水をみることがある.無症状であり,肝機能異常にて発見されることも多い.小児の原因不明の肝障害は本症を疑う.
2)神経症状:
構音障害,振戦(羽ばたき振戦),ジストニア,不随意運動,流涎,書字不能などをみる.また,精神異常の出現をみることもあり,放置すれば知的障害および寝たきりとなる.
3)眼:
Kayser-Fleischer輪のほか,白内障(ひまわり白内障)など.
4)腎症状:
血尿,蛋白尿,糖尿,アミノ酸尿,高カルシウム尿(二次性Fanconi症候群)など.
5)その他:
易骨折症,溶血性貧血,出血傾向,無月経などがある.[青木継稔]
Wilson病(その他の代謝異常)
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報