日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビーチ・ボーイズ」の意味・わかりやすい解説
ビーチ・ボーイズ
びーちぼーいず
Beach Boys
アメリカのポップ・ミュージック・グループ。カリフォルニア出身のウィルソン三兄弟を中心に結成された。結成時のメンバーは、ブライアン・ウィルソンBrian Wilson(1942― 、ベース、キーボード)、カール・ウィルソンCarl Wilson(1946―1998、ギター)、デニス・ウィルソンDennis Wilson(1944―1983、ドラム、キーボード)の兄弟、そしてマイク・ラブMike Love(1941― 、ボーカル)、アラン・ジャーディンAlan Jardine(1942― 、ベース、ギター)。サーフ・ミュージック、ジャン&ディーンなどとともに南カリフォルニア出身のポップスの新星として、1962年にキャピトル・レコードからデビュー。彼らの特徴は、エバリー・ブラザーズ、フォー・フレッシュメン、フォー・シーズンズやドゥーワップ・ミュージックに影響されたハーモニーと、チャック・ベリーを彼らなりに解釈した軽快なロック・ビートの融合だった。
1963年に「サーフィンU. S. A.」が大ヒットし、ほかにも「サーファー・ガール」など4曲をヒット・チャートに送り込み、一躍英米で人気グループになる。その後『トゥデイ』(1965)から、ブライアンのソングライティングの才能は発展を続け、フィル・スペクターのサウンド・プロダクションやビートルズの『ラバー・ソウル』(1965)に刺激され、スタジオ・ワークとソングライティングに打ち込んでゆく。そのためブライアンは1965年に演奏活動から離れ、ブルース・ジョンストンBruce Johnston(1942― 、ベース、キーボード)が加入。
1966年の『ペット・サウンズ』は彼らが心血を注いで作った傑作として、ポップ・アルバムの最高峰とされるが、発表当時はこのアルバムは高い評価を得たわけではなかった。収録曲の「グッド・バイブレーション」が英米のヒット・チャートで1位になったとはいえ、『ペット・サウンズ』はレコード会社の耳には「売れる」アルバムには聴こえなかったため、レコード会社との確執が始まり、このことがブライアンを精神的に追い詰めることになる。「グッド・バイブレーション」に続き「英雄と悪漢」もヒット、ブライアンは鬼才バン・ダイク・パークスとともに、『スマイル』という『ペット・サウンズ』を超える内容のアルバムを制作中と伝えられたが、ブライアンの精神状態の悪化のため制作は中止され、このアルバムは世に出ることはなかった。
ブライアンの精神状態とグループ内での立場はさらに不安定になったが、バンドは『スマイリー・スマイル』(1967)をリリース。ビーチ・ボーイズはブライアンだけのバンドではないことを証明するかのように、ほかのメンバーも才能を開花させ、『ワイルド・ハニー』(1967)をリリースした。その後レーベルをワーナー・ブラザーズに代えて、『サンフラワー』(1970)、未発表だった『スマイル』のマテリアルが収められた『サーフズ・アップ』(1971)といったアルバムを相次いでリリースするが、その持続も途絶え、1972年の『オランダ』以降、作品の質は低下する。ブライアンは精神障害のため一時期は完全に音楽活動から離れていたが、1980年代には復帰し、1990年代までアルバムをリリースし、ツアーも行った。1983年にデニスが水死し、1998年にカールが病死した後は、ラブとジョンストンを中心にしたバンドでグループとしての活動を続ける。
[中山義雄]