日本大百科全書(ニッポニカ) 「BT」の意味・わかりやすい解説
BT
びーてぃー
鱗翅(りんし)目幼虫(ガやチョウの幼虫で、俗に毛虫、イモムシ、シャクトリムシ、ハマキムシなどという)を軟化致死させる伝染病の病原細菌であるバチルス・チューリンゲンシスBacillus thuringensisの略語。天敵細菌の一種。アメリカでは牧草地のマメ科牧草を害するモンキチョウの防除に実用化されている。日本では、1947年(昭和22)アメリカシロヒトリの侵入以来、この毛虫の街路樹での防除用としてBTの輸入使用が検討されたが、養蚕地帯への蔓延(まんえん)を恐れて実用化が遅れた。現在はBTの生芽胞(せいがほう)を含む製剤(「ダイポール」「チューリサイド」など)と、生菌の産生する結晶毒素(約20個のアミノ酸からなるタンパク質を製剤化した「トアローCT水和剤」)が市販されている。BTは、1911年にドイツのチューリンゲンで発見されたが、その後の文献調査により、石渡繁胤(いしわたしげたね)(1868―1941)博士が1901年(明治34)にカイコの卒倒病の病原菌として分離し、バチルス・ソットーBacillus sottoと命名した菌と同一種であることが判明した。
[村田道雄]