日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラニン」の意味・わかりやすい解説
アラニン
あらにん
alanine
アミノ酸の一つ。略号はAlaまたはA。α(アルファ)-アラニンの化学式はCH3CH(NH2)COOHで、分子量89.09。天然に発見される以前に、ドイツの有機化学者ストレッカーAdolph Friedrich Ludwig Strecker(1822―1871)が1850年にアセトアルデヒドから合成し、アルデヒドaldehydeの最初の2文字をとってalanineと名づけた。L-アラニンはタンパク質の構成成分で、とくに絹フィブロインでは全アミノ酸の27%含まれている。L-アラニンは絹フィブロインの加水分解物から分離精製される。遊離の状態ではムラサキウマゴヤシに存在する。人間にとっては非必須(ひひっす)アミノ酸である。生体内ではピルビン酸から合成され、このピルビン酸を経て、TCA回路(トリカルボン酸回路)に通ずる。分解点はL体が297℃、D体が293℃。水に溶けやすく、アルコールには溶けにくい。
β(ベータ)-アラニンの化学式はNH2CH2CH2COOHで、分子量89.09。タンパク質中にはない。パントテン酸、カルノシン(β-アラニル-L-ヒスチジン。種々の動物の骨格筋に存在する)、アンセリン(N-β-アラニル-1-メチル-L-ヒスチジン。各種の動物や魚類の筋肉中に存在する)、補酵素Aの構成成分として存在するほか、マメ科植物の根粒(こんりゅう)やイヌ、ブタ、ウシなどの大脳に遊離の状態で存在し、生物学上重要なアミノ酸である。分解点196℃。水に非常に溶けやすく、アルコールには溶けにくい。
[降旗千恵]
『厚生省薬務局監修『医師・歯科医師・薬剤師のための医薬品服薬指導情報集(5)』(1996・日本薬剤師研修センター、薬業時報社発売)』▽『東野一弥・山本章編『代謝疾患3 糖質・アミノ酸代謝異常』(1996・中山書店)』▽『松尾収二監修、前川芳明編『臨床検査ディクショナリー』(1998・メディカ出版)』