F中心(読み)エフチュウシン

化学辞典 第2版 「F中心」の解説

F中心
エフチュウシン
F center

イオン結晶の放射線照射によって最初に可視部に吸収帯の現れる色中心で,Farbzentrenの頭文字をとって名づけられたものであり,陰イオンの抜けた格子点にとらえられた電子である.陰イオンの抜けた孔は有効正電荷をもつので,それのつくるポテンシャル場の電子として,F中心は水素原子的に類推され,1s→2p遷移にもとづく光の吸収帯をもつ.吸収帯は約0.5 eV の半値幅のガウス型で吸収ピークの光量子エネルギーhνmaxとハロゲン化アルカリ結晶の格子定数dとの間には

νmaxd 2定数
の実験式がある.F中心は光または熱によって凝集し,F型中心,M,R,Nをつくり,さらに長時間加熱すると金属コロイドに変わる(青い岩塩).F中心のESR吸収は,半値幅数十エルステッド(Oe)で,そのg因子は2にきわめて近い値をもつ.低温でF中心は波長1 μm の領域に蛍光帯を示し,励起状態はたとえばKClで600 ns とかなり長い寿命をもつのが特徴である.F型中心は電子を1個余分にとらえて,負荷電中心,F′,M′,R′,N′を,また正孔をとられることによって,正荷電中心,F,M,R,N をつくることができる.これらの中心は,いずれも吸収帯をF中心の吸収帯の長波長側にもっている.F中心のまわりの金属イオン一つが異種金属(KClであれば Na,Li など)で置き換わった場合を FA 中心という.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「F中心」の意味・わかりやすい解説

F中心
エフちゅうしん

着色中心」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のF中心の言及

【着色中心】より

…もともとは無色透明であった結晶がこのために色を帯びる場合をいった。典型的な例はハロゲン化アルカリのF中心で,ハロゲン化アルカリの単結晶をアルカリ金属の蒸気中で高温に保つとF中心が作られ,着色する。例えば塩化カリウムKClでは赤紫色となる。…

※「F中心」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android