家庭医学館 「IgA腎症の診断基準」の解説
あいじーえーじんしょうのしんだんきじゅん【IgA腎症の診断基準】
大部分の症例は無症候性だが、ときに急性腎炎のような症状を示すこともある。ネフローゼ症候群が現われることは比較的まれ。一般的に、IgA腎症のままの状態が続くことが多いが、一部の症例では末期の腎不全に移行する場合もある。
②尿検査成績
尿の異常の診断には3回以上の検尿が必要で、そのうち2回以上は一般の尿定性試験に加えて尿沈渣の顕微鏡検査も行なう。
a.必発所見:持続的な顕微鏡的血尿(赤血球5~6個/1視野以上)
b.頻発所見:持続的または間欠的たんぱく尿
c.偶発所見:肉眼的血尿(急性上気道炎あるいは急性消化管感染症状に併発することが多い)
③血液検査成績
a.必発所見:なし
b.頻発所見:成人の場合、血清IgA値 350mg/dℓ 以上(全症例の半数以上にみられる)
④確定診断
腎生検による糸球体の観察が唯一の方法。
a.光学顕微鏡所見:部分的な巣状分節性から球状に広がるびまん性全節性までのメサンギウム増殖性変化
b.蛍光抗体法または酵素抗体法所見:メサンギウムを中心に広がるIgAの沈着(他の免疫グロブリンと比較して、IgAが優位)
c.電子顕微鏡所見:メサンギウム基質内のとくにパラメサンギウムで高密度の物質が沈着
(注)*②のaとb、および③のbがみられれば、IgA腎症の可能性が80%以上。ただし、泌尿器科の病気との鑑別診断を行なうことが必要。
*IgA腎症と似た腎生検所見を示す紫斑病性腎炎、肝硬変症、ループス腎炎などとは、それぞれの病気に特有の全身症状の有無や検査所見によって鑑別を行なう。
(資料/第38回日本腎臓学会学術総会記念:腎臓病学の診断アプローチ)