臨床医学の一分科で、診療科目としては比較的新しいものである。泌尿器科学urologyを直訳すれば尿学となるが、実際には尿の分泌と排泄(はいせつ)に関係のある臓器(腎臓(じんぞう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道)の疾患を診療し、あわせて男性の性器である睾丸(こうがん)、副睾丸、精管、精嚢(せいのう)、前立腺(せん)の疾患も取り扱っている。婦人の場合は、尿路の疾患は泌尿器科、性器の疾患は婦人科で扱う。また腎疾患のうち、腎炎やネフローゼは内科、性病のうちで淋疾(りんしつ)以外は皮膚科、脱腸や痔(じ)は外科でそれぞれ診療することになっている。
第二次世界大戦前から戦争直後にかけては性病患者が多く、これを皮膚科と泌尿器科で治療していたので泌尿器科は性病科と一部で誤解されていたが、その後の性病の減少とアメリカ医学の導入とともに新しく泌尿器(外)科として、皮膚科より分離独立して発足した。現在では前立腺、膀胱、腎臓などの手術、尿路の感染症や結石の治療が、日常診療の重要な部分を占めている。
なお、泌尿器科では内視鏡が古くから発達し、膀胱鏡や尿道鏡などが広く用いられ、腫瘍(しゅよう)、結石、異物などの診断ならびに治療に役だっている。ことに近年急激に増えてきた前立腺肥大症の治療に内視鏡を用いた経尿道的電気切除術が日本でも広く行われつつあり、開腹手術をせずにすむので喜ばれている。なお結石も、新しい器械がいろいろできたので、手術をしないでとれるようになりつつある。ちなみに欧米では、泌尿器科は外科の一部として脳外科や胸部外科と同様に取り扱われ、いまだに泌尿器科が独立していないところもある。
[大越正秋]
泌尿器,すなわち腎臓,尿管,膀胱,尿道の病気を取り扱い,男性性器として睾丸,副睾丸,精管,精囊,前立腺の病気を対象とする臨床の一分科で,治療手段として手術が主体となるので泌尿器外科ともよばれる。泌尿器科urologieの語をはじめて用いたのはフランスの医師ルロア・デティオールJ.J.J.Leroy d'Étiolles(1798-1860)といわれ,1879年の膀胱鏡の発明(ディッテルL.von Dittelら)を契機に急速に発達した。最近では副腎疾患,慢性腎不全,腎血管疾患の外科的治療も泌尿器科で行われる。泌尿器科の病気は奇形,炎症,腫瘍,結石,外傷など主として外科的治療の対象となるものが取り扱われる。年代的には,小児期の半陰陽,尿道下裂,停留睾丸,ウイルムス腫瘍,夜尿症が,思春期には男子の二次性徴発現不全,成人では性病,不妊症,尿路結石が,初老期では前立腺肥大症や泌尿器悪性腫瘍が対象となる。泌尿器科では男性の病気ばかりでなく,婦人泌尿器科という分野もあるように尿失禁,排尿困難,腎盂(じんう)腎炎も扱う。また妊娠前後,婦人科手術後の泌尿器科的治療を行うこともしばしばである。
執筆者:小磯 謙吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新