内科学 第10版 「III型アレルギー反応」の解説
III型アレルギー反応(アレルギー性疾患の総論)
Ⅲ型アレルギー反応は,免疫複合体型,Arthus型とよばれ,可溶性抗原とIgG,IgMとの免疫複合体による組織傷害である.免疫複合体は通常,抗体のFc部に対するFc受容体を有する好中球などの食細胞によって効率よく除去されるが,特に除去されず組織や臓器に沈着することがある.組織に結合した免疫複合体については,集塊が大きく,食細胞内に取り込むことができず,活性酸素・蛋白分解酵素・ヒスタミンなどが好中球から放出され,組織傷害が引き起こされる.また,免疫複合体を介して補体の活性化が促されることによっても,組織や臓器が傷害される.さらに補体のC3a,C5aの活性化により,好塩基球・マスト細胞・血小板からもセロトニンやヒスタミンをはじめとしたメディエーターが放出される.これにより,血管透過性が亢進し,免疫複合体の沈着が促されるほか,凝固系が活性化し,微小血栓が生じる.以上のように,免疫複合体が組織や臓器に沈着することにより,組織傷害がもたらされる(図10-22-2). 血清病,糸球体腎炎,全身性エリテマトーデスがⅢ型アレルギーの代表的疾患である.また,抗体を有している者の皮膚に抗原を皮下注射した際に,数時間後に皮膚の炎症反応が起きる.これをArthus反応とよぶが,これもⅢ型アレルギーによる反応の代表例である.また,リウマトイド因子はIgG-Fc部分に対する自己抗体であるが,自己免疫性疾患でしばしば陽性となり,免疫複合体形成への関与が考えられている.実際に関節リウマチでは,IgGと産生されたリウマトイド因子による免疫複合体が病態形成に関与していると考えられている.[茆原順一]
■文献
茆原順一:好酸球が語るアレルギーの臨床と分子病態.アレルギー,59: 943-949, 2010.
伊藤 亘,茆原順一:アレルギー疾患の診断の進め方.医学と薬学,55: 15-21, 2006.
Palomares O, Yaman G, et al: Role of Treg in immune regulation of allergic diseases. Eur J Immunol, 40: 1232-1240, 2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報