全身性エリテマトーデス(読み)ぜんしんせいえりてまとーです(英語表記)systemic lupus erythematosus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「全身性エリテマトーデス」の意味・わかりやすい解説

全身性エリテマトーデス
ぜんしんせいえりてまとーです
systemic lupus erythematosus

エリテマトーデスは紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)ともよばれ、いろいろな臓器が冒される全身性エリテマトーデス(略称SLE)と、おもに皮膚に病変がみられる円板状エリテマトーデスDLE)に分けられ、両者間にはさまざまな移行型がある。SLEは特定疾患(難病)に指定されている。

 SLEは女性に多い(男性の約10倍)病気であり、とくに妊娠可能な若い年齢に目だつ。原因は不明であるが、免疫異常によることは確かで、感染症、紫外線(日光)、心身のストレス、妊娠・出産、ある種の薬剤(ヒドララジンなどの降圧剤やプロカインアミドなどの抗不整脈剤など)が誘因となる。患者の家族には、このほかの膠原(こうげん)病や自己免疫疾患にかかっている人があり、体質の遺伝も考えられている。

 症状は多種多様で、初発症状としては関節や筋肉の痛みがもっとも多く、発熱を伴い、顔面の蝶(ちょう)形紅斑などの皮膚症状やタンパク尿などの腎(じん)症状もみられる。このほか、胸膜炎や肺炎などの呼吸器症状、心膜炎や心筋炎などの心症状、てんかん様のけいれん発作や多発神経炎などの神経障害などもみられる。

 診断上もっとも重要なことは抗核抗体の証明である。これは自己免疫疾患にみられる血中自己抗体一種で、細胞核の成分に対する抗体をいい、蛍光抗体法による検査でほとんど100%陽性を示す。この抗体は強皮症リウマチ様関節炎などでも陽性を示すので、診断は臨床症状とともに総合的な判断を行う必要がある。

 治療には副腎皮質ホルモン剤ステロイド剤)や免疫抑制剤などが使われる。また、誘因を避けることも必要である。寛解増悪を繰り返し、慢性に経過するものが多く、以前ほど予後は悪くないが、強い腎障害、神経障害、心筋障害がある場合はとくに注意を要する。

[高橋昭三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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