NOx吸蔵還元型三元触媒

日本の自動車技術240選 の解説

NOx吸蔵還元型三元触媒

 従来の三元触媒は、空燃比リーン域(酸素過剰雰囲気下)でNOxを浄化できないため、加速時等のNOx排出量が高い高負荷域では理論空燃比で運転されていた。燃費を向上するためには、空燃比リーン域のNOxを浄化できる触媒開発することが大きな課題となっていた。 空燃比リーン時(酸化過剰雰囲気下)にNOxを吸蔵し、リッチ時に吸蔵されたNOxを還元・浄化する新しい浄化原理をもつ触媒をリーンNox触媒と呼ぶ。 リーンNOx触媒の組成は、従来の三元触媒にNOx吸蔵材としてアルカリ性の物質を加えたもので、モノリス担体にアルミナをコートして、白金Pt)、ロジウムRh)、及び種々のアルカリ類、アルカリ土類、希土類酸化物を担持したもの。 この触媒に吸蔵されたNOxは、ごく短時間空燃比をリッチにすることにより生成した多量のCOとHCと反応して還元される。 実走行では様々な運転パターンがあり、リーン条件が長時間続くこともある。そこで、運転条件からその時点におけるNOx吸蔵量と、触媒が吸蔵できる最大容量を推定して、両者を比較し、NOx吸蔵量が最大容量に近づいたら、ごく短時間だけのリッチに制御して、NOxを還元・浄化して、再びリーンに戻す。 このリッチ制御による燃費損失は1%以下に抑えることができ、市街地走行時のみならず、定常走行時にも空燃比リーン域を拡大でき、燃費を向上すると共にNOxを浄化することができた。 実走行においてリッチに制御すると、リーンとリッチのトルク段差から、ドライバーがショックを感じるが、空燃比と点火時期の制御法の改良によりショックを軽減し、十分に許容できるレベルになった。 劣化要因:SO2が含まれるガス中では、貴金属上で酸化された後、吸蔵材と反応して、リッチ雰囲気で分解しにくい硫酸塩を生成し、NOxの吸蔵量が減少し浄化率が低下する。 国内試験法(10-15モード)により、エミッション性能を評価した結果、NOx浄化率は新品触媒時は90%、耐久後では60%であった。この触媒の劣化の主因は硫黄被毒である。この触媒では燃料中の硫黄濃度が低いほうが望ましい。           保管場所トヨタ自動車(株)歴史文化部トヨタ博物館 (〒480-1131愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番地100号)
製作(製造)年1994
製作者(社)トヨタ自動車(株)
資料の種類量産品
現状保存・非公開
会社名/製作者(社)トヨタ自動車㈱
愛称リーンNOx触媒
技術用途希薄燃焼エンジン用
製作年1994年8月
開発完了年1994
協力キャタラー工業㈱、㈱豊田中央研究所
搭載車種カリーナ
エンジン希薄燃焼エンジン;直列4気筒DOHC;4A-FE(1.6L)、7A-FE(1.8L)
燃料60km定地走行:29.5km/L;10・15モード走行:17.6km/L
エミッションコントロールシステム(含触媒)触媒担体:モノリス1.7Lにアルミナをコート;触媒:白金・ロジウム系;吸蔵材:種々のアルカリ、アルカリ土類、希土類酸化物;空燃比制御(EFI):理論空燃比と希薄空燃比を切り替える空燃比フィードバック制御;減速時制御:減速時にフーエルカット(燃費向上、触媒加熱防止)、独立ヘリカルポート;点火時期制御:電子進角システム(ESA)、スワールコントロールバルブ;触媒蒸加熱警報装置:排気温センサー、排気温ウォーニングランプ、燃焼圧センサ;燃料蒸発ガス抑止装置:キャニスターパージ制御、ブローバイガス還元装置;
効果NOx浄化率(10・15モード):新品触媒時 約90%、耐久後 約60%;
エピソード・話題性希薄燃焼時のNoxを吸蔵し、還元浄化できる新しいコンセプトの三元触媒
特徴空燃比リーン時に、Noxを酸化して硝酸塩として吸蔵し、リッチ時に吸蔵されたNoxをHCやCOとの反応により還元浄化するメカニズムで、希薄燃焼時のNoxを浄化する。従来の三元触媒にNox吸蔵材としてアルカリ性の物質を加えたもの。リッチによる燃費損失は1%以下に抑えられた。
参考文献田中俊明、加藤健治、竹島伸一、松本伸一、横田幸治、笠原光一、井口哲「Nox吸蔵還元型三元触媒システムの開発」自動車技術会論文集 Vol.26, No.4, October 1995

出典 社団法人自動車技術会日本の自動車技術240選について 情報

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