三元触媒(読み)サンゲンショクバイ

デジタル大辞泉 「三元触媒」の意味・読み・例文・類語

さんげん‐しょくばい【三元触媒】

ガソリン自動車排気ガスに含まれる有害物質を除去する触媒装置。主な有害物質が炭化水素一酸化炭素窒素酸化物の3種類であることからの名。白金パラジウムロジウムを用いた触媒で同時に酸化または還元し、水・二酸化炭素・窒素として排出する。

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化学辞典 第2版 「三元触媒」の解説

三元触媒
サンゲンショクバイ
three way catalyst

エンジンの排気ガス中に含まれる有害成分である一酸化炭素,未燃炭化水素,および窒素酸化物の3成分を,同時に浄化できる機能を有する触媒.現在では,周期表9族および10族の貴金属(Pt,Pd,Rh)の単体あるいは混合物に,酸化セリウム助触媒として加え,気体の流れに対して抵抗の少ないハニカム(モノリス)形に成形したアルミナなどの担体に分散担持して用いられている.反応は,簡単にいえば窒素酸化物による一酸化炭素および未燃炭化水素の酸化であり,そのほか水性ガスシフト反応なども起こる.すなわち,3成分を同時に除去するには,酸化物質と還元物質とのバランスをとる必要がある.いいかえると,燃料とそれを完全燃焼させるのに必要な酸素を含む空気との割合(理論空燃比)を維持する必要がある.もし空気過剰だと,一酸化炭素と未燃炭化水素は減少するが,窒素酸化物は増加してしまう.一方,空気不足だと,窒素酸化物は減少するが,一酸化炭素と未燃炭化水素は増加する.このように三元触媒は,非選択的酸化還元触媒であるので,理論空燃比近くで運転するガソリンエンジンの排気浄化に適しており,現在ガソリンエンジンを搭載している自動車に使用されている.しかし,実際に燃料を完全に近く燃焼させ,燃費を向上させるためには,過剰の空気が必要である.このため,過剰の酸素の存在下でも,3成分,とくに窒素酸化物を除去できる触媒の開発が進められている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「三元触媒」の意味・わかりやすい解説

三元触媒
さんげんしょくばい

自動車の排出ガス浄化装置(後(あと)処理装置)の一つ。白金、パラジウムなどを用いた触媒コンバーターで、混合気を理論空燃比(約14.5)に保って排気中に酸素が残らないようにする。同時に排気温度を十分に高く保つと、一酸化炭素COと炭化水素HCに対しては窒素酸化物NOX酸化剤として働き、一方COとHCはNOX還元剤として働いて、3成分を同時に低減することができる。そのためには、O2センサーで排気中の残存酸素量をつねに測定し、電子制御燃料噴射装置や電子制御気化器を精密にコントロールして酸素が残らないようにしなければならない。また触媒コンバーターは高温になるので防火構造とし、過熱警報装置を備える。現在、もっとも一般的に使われている。

[高島鎮雄]

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