Pompe病

内科学 第10版 「Pompe病」の解説

Pompe病(グリコーゲン病II型、ライソゾームα-グルコシダーゼ欠損症)(グリコーゲン病(糖原病))

(1)Pompe病(グリコーゲン病Ⅱ型,ライソゾームα-グルコシダーゼ欠損症)
 lysosomal acid α-glucosidase (α-1,4-グルコシダーゼ,酸性マルターゼ)欠損による常染色体劣性遺伝疾患である.本酵素はライソゾーム酵素でマルトースグリコーゲンからグルコースを遊離する.本症は発症年齢,障害臓器,予後などの違いから3病型に分類される.
1)乳児型:
生後数カ月以内に筋力低下(筋緊張低下児,floppy infant)が明らかになり,病変は全身に及び心臓,肝臓,舌などの臓器腫大が進行する.呼吸困難や哺乳困難が著明で無治療の場合半年から2年で呼吸不全や心不全で死亡する.先天性筋ジストロフィーなどとの鑑別が必要である.
2)小児型:
小児期早期より筋力低下や筋萎縮が進行し,無治療の場合呼吸不全で成人するまでに死亡する.臓器腫大はまれである.男子例ではDuchenne筋ジストロフィーなどとの鑑別を要する.
3)成人型:
20~30歳以降に緩徐進行性のミオパチーとして発症する.約30%の症例で呼吸不全が出現する.多発性筋炎や肢帯型筋ジストロフィーとの鑑別が必要である.
診断
 血清CK,LDH,ASTなどの筋原性酵素が上昇する.前腕阻血運動負荷試験は正常である.筋電図では筋原性変化のほかに筋線維の異常興奮がありミオトニア放電(myotonic discharge)がみられるが,臨床的にはミオトニアは認められない.筋病理所見は,酸性ホスファターゼの活性亢進を伴う空胞変性,PAS陽性物質の蓄積がみられ,電顕的には限界膜で囲まれたグリコーゲン顆粒の増加が認められる.確定診断は骨格筋やリンパ球における酵素欠損あるいは遺伝子異常を証明することによる.
治療
 遺伝子操作により生成したα-グルコシダーゼの経静脈投与による酵素補充療法の有効性が臨床試験で証明され,特に乳児型に劇的な効果を示し2007年4月に日本でも保険承認された(一般名アルグルコシダーゼアルファ).隔週で体重あたり 20 mg/kg を点滴静注する.[樋口逸郎]
■文献
Dimauro S, Hays AP, et al: Nonlysosomal glycogenoses. In: Myology, 3rd ed, pp1535-1558, McGraw-Hill, New York, 2004.糖原病Ⅱ型(ポンペ病)ガイドライン編集委員会(代表 衞藤義勝):糖原病Ⅱ型(ポンペ病)診断治療ガイドライン,イーエヌメディックス,東京,2007.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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