代表(読み)だいひょう

精選版 日本国語大辞典 「代表」の意味・読み・例文・類語

だい‐ひょう ‥ヘウ【代表】

〘名〙
① (━する) 法人や団体の機関となり、これに代わってその意思を他に表示すること。また、その人。〔改訂増補哲学字彙(1884)〕
② (━する) 一部分が全体の特徴や性質を表わすこと。また、全体を表わす代わりのもの。
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一一「窮屈なる碁石の運命はせせこましい人間の性質を代表して居る」
③ ある技術や能力が、集団のなかで特にすぐれているということで選ばれた人。
※スポーツを語る(1932)〈鳩山一郎〉二「オリムピックの代表名選手」
④ 数学で、ある集合を一つの同値関係で類別した時、その一つ一つの類から各々一つずつとり出した元。代表元。

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デジタル大辞泉 「代表」の意味・読み・例文・類語

だい‐ひょう〔‐ヘウ〕【代表】

[名](スル)
その中の一部であるものが全体をよく表していること。また、そのもの。「日本を代表する風景」「若者を代表する意見」
法人・団体や多数の人に代わって、その意思を他に表示すること。また、その人。「卒業生代表して答辞を述べる」「世界会議の日本代表
その技術や能力が特にすぐれているということで、ある集団の中から選ばれた人。「代表選手」
[類語]代わり代物別物代替代替わり代用代理代行身代わり肩代わり代わる代える入れ代わる成り代わる

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改訂新版 世界大百科事典 「代表」の意味・わかりやすい解説

代表 (だいひょう)

ヨーロッパ語でこの言葉の原型にあたるラテン語のrepraesentareは,あるものを現前させる(目の前にあらわれさせる),ということを意味する。C.シュミットが,〈代表するとは,ひとつの目に見えぬ存在を,公然と現存する存在によって目に見えるようにし,現前させることである〉と述べ,〈目に見えないものが現存しないと前提され,しかも同時に現存するとされる〉という〈弁証法〉について語るのは,そのような言葉の系譜をふまえながら,憲法上の代表論のなかに,一定の形而上学的含意をもちこもうとするものであった。

 私法の分野では,講学上,法人の機関の行為が法律では法人の行為としてあつかわれることを指して,機関が法人を代表するという。もっとも,法令用語としては,代表と代理は明確に使い分けられておらず,日本の民法44条の代理,同824条,859条の代表は,それぞれ,講学上の用語とは反対に使われている。代表の観念をめぐる問題は,とりわけ憲法の分野で論ぜられることが多い。日本国憲法は,〈両議院は,全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する〉(43条1項)と定めており,その規範的意味は,(1)特定の身分や地域の利益を代弁するのでなく,また,選挙区の指図に拘束されないという消極的意味と,(2)国民の世論をできるだけ忠実に反映するものでなければならないという積極的意味とを,あわせ含んでいると考えられるが,それ自体としてみれば常識的な命題にもみえるこれら(1)(2)の2点は,いずれも,市民革命以来の近代憲法史のなかで激しく争われてきた。

 市民革命後の代表観念は,それに先行した身分制議会が,身分制的に構成された選出母体の訓令に法的に拘束されるものであったのに対し,そのような命令的委任を否認することによって,全国民の代表であるべきことを強調するものであった(国民代表)。そのような議会のあり方を示すものとして有名なのが,イギリスでいえば1774年に自分の選挙区の選挙民にあてたE.バークの言葉であり,その実定法上最も明確な表現というべきものは,1791年フランス憲法であった。この憲法は,国民(ナシオン)の主権をうたいつつ,国王と立法議会を代表者としていたが,そのことにも示されるように,上記の二つの要素のうち,もっぱら(1)の要素こそがここでの代表の核心であり,(2)の要素は意識的に否定されていた。それゆえ,選挙による議員にしても,〈選挙人たちによって選挙された主人Herrであって,彼らのしもべではない〉(M.ウェーバー),〈国民に対する議会の独立宣言〉(H.ケルゼン)といういい方が,ここではあてはまった。それに対し,19世紀に男子普通選挙制が成立してくる段階となると,そこで語られる代表は,(2)の要素をも含むものとなってくる。イギリスで〈議会は法的主権者だが,政治的主権は選挙民の手に移った〉(A.V.ダイシー)といわれ,フランスで古典的な国民代表に対する〈半代表〉(A.エスマン)という概念が使われるようになった時期が,それにあたる。しかし,20世紀に入り,とりわけ第1次大戦後,社会的緊張が議会平面での政党間の激突となってあらわれるようになると,階級利害をはじめとする特殊利害の衝突によって,議会における代表は危機に陥る。C.シュミットは,〈半代表〉的な議会のあり方を否定し,国家元首=大統領の代表性こそを強調する。さきに引用した代表の〈弁証法〉に関する叙述は,そのような文脈でのものである。ケルロイターによれば,議会における議員や政党は利己的利益を代理するにすぎず,指導者たるヒトラーこそが,公的・政治的価値を真に代表するとされた。

 第2次大戦直後は,議会の代表性(上述の(2)の要素を加えた,〈半代表〉の意味でのそれ)の復権が基調となった。イギリスやフランスでは議会中心主義の伝統がひきつがれていたし,ドイツではナチズム体験への総括があったからである。ただし,ほぼ1960年代以降,フランスでは大統領の直接公選制や人民投票制の導入によって,議会だけが世論を独占的に代表するという状況には大きな修正が加えられたし,イギリスにおいてすら,EC加盟問題をめぐる人民投票が(諮問的なものというたてまえであれ)おこなわれている。その点では,西ドイツ(現ドイツ)のほうがかえって政党を媒介とする世論の実質的反映ということを標榜しつつ,議会の独占的代表性というたてまえが掲げられているといえる。

 ところで,身分や地域でなく全国民を代表すべきだというたてまえの点では,市民革命期以来,近代憲法の掲げる代表の理念は一貫していた。それに対し,国民代表議会にとってかわって,なんらかの意味での職能ないし階級の代表を統治構造の根底におこうという方向がある。ソビエト(ドイツ語でレーテ)は,国民代表を,結局支配階級の利益と意思を代表するにすぎないと抑制する立場から,搾取されてきた労働者階級を中心とする選出母体によってその利益を代表することを標榜するものであった。イタリアのファシズムは,現存する階級関係を,職能代表制に編成することによって体制に包摂しようとする思想を掲げていた。

 国民代表議会の存在を前提としながらも,それと並行して,労使それぞれを選出母体とする経営協議会,より広くさまざまの経済的・社会的・文化的活動領域を母体として選出される協議会(たとえば,1958年フランス憲法の経済社会評議会),さらには,諮問法制における審議会などが一種の職能代表機能を演ずる。最後にまた,国民代表を理念として掲げる議会をもちながら,統治機構の現実の働きとして,議会の機能自身が職能利益代表的なものに接近する傾向がみられる。すなわち,経済界と巨大労働組合組織をはじめとするさまざまの利益集団圧力団体)が,経済政策をはじめとする国政の立案,運営全般を動かす実質的な主役となり,みずからも体制機構のなかに多かれ少なかれ組み込まれてくるという,ネオ・コーポラティズムの傾向である。
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法人の機関(手足)である理事が外部に対して行為した場合のように,ある人(この場合は理事)の行為がそのまま他人(この場合は法人)の行為としての効果を生じる関係をいう(民法53条)。代理の場合は,代理人が本人のために行為し,その効果を本人に帰属させる関係であるが,代理人の行為はあくまで代理人の行為であって本人の行為とはされず,この点で代表とは異なる。それゆえ,代表者である理事の不法行為は法人の不法行為となりうるが,不法行為の代理ということはありえないから,代理人の不法行為で本人が責任を負うのは,使用者としての責任(使用者責任)を負う場合だけであるとされる。しかし,学説の中には,代表の観念を認めず,代理の理論で一貫させるべきだとするものもある。民法上も,必ずしも用語は統一されておらず,理事の代表権代理権といったり(54条),理事を代理人といったり(44条)している。また,親権者後見人のような法定代理人の代理権を表すのに代表の語を用いたりしている(824,859条)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「代表」の意味・わかりやすい解説

代表
だいひょう
representation

ある共同社会の全成員から、共同社会全体の統一的意志を実現する主体とみなされ、なにものにも拘束されず自由に行動することを認められた人または団体をいう。君主制国家における君主、民主制国家における議会などがその典型例。このような代表概念が、歴史上・政治上とくに重要になったのは、市民革命を契機にして、君主にかわって議会が国民意志の代表とされた時点においてである。中世においても身分制議会が存在したが、この場合には、僧侶(そうりょ)、貴族、庶民の代表は、それぞれの身分の代表にすぎず、彼らは各身分によって委任された事柄についてだけ決定に参加できるという、いわゆる拘束的委任の下に行動していた。このため、身分制議会は別名等族会議ともよばれた。しかし、市民革命後、各国において近代的な議会制度が確立されていくなかで、国会議員は所属・身分のいかんを問わず全国民の代表として行動すべきである、ということがいわれ始め、ここに近代的な代表概念が成立した。日本国憲法第43条1項に「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」という規定があるが、これは、国会議員は、自己の利益や選挙区あるいは自己の属するなんらかの集団の利益だけを追求するのではなく、全国民の利益を実現するように行動せよ、という意味を含んでいる。

 こうした近代的な代表概念の原理を最初に論理化したのはイギリスのホッブズである。彼は、国王派と議会派が真っ二つに分裂して闘っている悲惨な状況を眼前にして、人間が自由と生命の安全を確保するためには、なんらかの統一的意志の下で生活できる共同社会を設立すべきであると述べ、全成員が契約を結んで一つの共通権力を設け、その下で代表、つまり主権者を選んで、代表のつくる法律の下で安全に生きよと説いた。したがって、彼のいう代表は、共同社会全員の安全を確保する義務を課され、他方、代表を選出した成員は代表の制定した法律に自発的に従うよう義務づけられていることになり、ここに、代表の行使する権力は、単なる暴力ではなく、全成員の利益を実現する権威へと高められた。このことを、ルソーは、主権を構成するという点で人々は主権者とよばれ、代表の制定した法律を守るという点で人々は臣民とよばれる、と表現している。現代では、ロックが議会を国民の代表機関としたことに基づいて、ほとんどの国々で国民代表は各国議会と同一視せられている。したがって、代表をめぐる問題としては、はたして議会が全国民の意志を真に代表しえているかどうかという点に帰着するであろう。

[田中 浩]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「代表」の意味・わかりやすい解説

代表
だいひょう
representation

団体の全構成員によって選ばれた特定の少数者が団体の意思決定の機能を行使すること。私法関係では代理の観念と厳密には区別しないが,政治学上は両者を区別する。「代理」関係では,代理者は独自の判断と意思によって行動するのではなく,委任者または委託者の意思に拘束され,委託された範囲内で行動し,それを逸脱した場合には無効であり,委託者の意思によっていつでも解任されるが,「代表」関係では,団体がひとたび特定の個人を代表とした場合,その代表者は独自の意思と判断で行動する権限を委任されたものとされ,代表者の行為はその団体の行為とみなされる。中世の等族会議では代理の観念が適用され,貴族,僧侶,市民の3身分から選出された議員は,それぞれの母体からの強制委任に服し,違反した場合には召還された。これに対し,代表の観念は近代国家において代議制とともに生み出され,ここでは議会は個々の地域住民が派遣した利益代表の集会ではなく,全体としての国民意思の代表機関とみられ,議員は国益の判定者としてひとたび国民に信頼され選挙された以上,個々の地域的利害にとらわれず,国民全体の見地から議会でその意思を決定すべきであり,住民は議員の決定に服すべきであって,議員に対する命令権を有しないとされる (自由委任) 。日本国憲法は,国民は「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」するとし (前文1段) ,両議院は「全国民を代表する選挙された議員」で組織すると定め (43条) ,その他議員の発言,表決の院外無責任 (51条) について規定するなど,基本的には国民代表観念に依拠することを明らかにしている。

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世界大百科事典(旧版)内の代表の言及

【議会】より

…イギリスではParliament,アメリカではCongress,フランスではChambre,ドイツではVolksvertretungという。
【身分代表から国民代表へ】
 合議体による政治決定という方式そのものの歴史はきわめて古く,部族社会の民会にまでさかのぼるが,近代議会の成立に重要なかかわりをもつのは中世身分制議会である。とくに近代議会発展史において他国に先がけた道をあゆんだイギリスでは,1965年に議会700年祭を祝ったことにもあらわれているように,中世身分制議会の伝統をひきつぎ,その発展という形で近代議会史がくりひろげられてきた。…

【国民代表】より

…国政の基準となる一般意思(総意)を決定する機関(国民代表府),またはその成員を意味することが多い。市民革命以降においては,一般に選挙による議会がその任務を担当しているので,国民代表という表現は,一般には議会または議員(政治家)を指すことになる。…

※「代表」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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