日本大百科全書(ニッポニカ) 「U2」の意味・わかりやすい解説
U2
ゆーつー
アイルランド出身のロック・バンド。メンバーはボノBono(1960― 、本名ポール・ヒューソンPaul Hewson、ボーカル)、ジ・エッジThe Edge(1961― 、本名デビッド・エバンズDavid Evans、ギター)、アダム・クレイトンAdam Clayton(1960― 、ベース)、ラリー・マレンLarry Mullen Jr.(1960― 、ドラム)。ダブリンのマウント・テンプル・ハイスクールの学生だった彼らは、マレンの呼びかけでバンドを結成し、1979年に最初のシングル「U23」をリリース。アイルランド国内で人気となった彼らは80年にアイランド・レコードと契約し、アルバム『ボーイ』を発表する。続いて『アイリッシュ・オクトーバー』(1981)、『WAR(闘)』(1983)と順調にアルバムをリリースし、パンクやニュー・ウェーブに影響を受けながらもスケールの大きなロック・サウンドを展開させていった。さらには北アイルランド紛争を歌った「サンデイ・ブラディ・サンデイ」(『WAR(闘)』収録)などにみられる政治的な姿勢も相まって、パンク以降のロックを代表するバンドという評価を得る。
84年になると、ブライアン・イーノとカナダ出身のシンガー・ソングライター、ダニエル・ラノワDaniel Lanois(1951― )をプロデューサーに迎えた『焔』をリリースし、翌年にはアフリカの飢饉救済のチャリティー・コンサート「ライブ・エイド」に出演する。87年の『ヨシュア・トゥリー』は発売後48時間で100万枚以上を売り上げてプラチナ・アルバムに輝き、世界22か国でヒット・チャート1位となり、同年のグラミー賞で最優秀ロック・パフォーマンス賞と最優秀アルバム賞を受賞した。
88年には、『ヨシュア・トゥリー』リリース後の世界ツアーを記録した映画『U2/魂の叫び』が公開される。同名のサウンドトラック盤ではブルース歌手B・B・キングとの共演も収録され、彼らの音楽的ルーツがうかがえる作品となった。
90年代に入ると彼らはエレクトロニック・ビートを積極的に導入し、『アクトン・ベイビー』(1991)、『ZOOROPA』(1993)、『POP』(1997)と意欲作を次々に発表する。また、91年から開始され、2年間をかけて世界中を回った「Zoo TV」ツアーは、マルチスクリーン映像を駆使した実験的なスタジアム・コンサートで、マルチメディア時代におけるロック・バンドの新たなライブ・コンサート像を提案するものであった。『オール・ザット・ユー・キャント・リーヴ・ビハインド』(2000)は、原点に立ち返ったオーソドックスなロック・サウンドが特徴的で、20年間にわたってロック界の第一人者として君臨してきた彼らの活動を総括する作品となった。ディレイ(原音と、それを遅らせた反響音を重ね合わせる音響効果)を多用し透明な音空間を作り出すジ・エッジのギター・サウンドは後のロック・サウンドに多大な影響を及ぼしたが、その音作りにはイギリスのプロデューサー、スティーブ・リリーホワイトSteve Lilywhite(1955― )による斬新な音響処理も貢献している。パンク・ロックから大きな影響を受けながらも、そのノイジーなサウンドとは異なる新鮮なサウンドとボノの情熱的なボーカルとの組み合わせが、80~90年代を代表するロック・バンドとしての彼らの世界的評価へと繋がった。
[増田 聡]
『スーザン・ブラック著、中野園子訳『ボノ語録』(1998・シンコー・ミュージック)』▽『カーター・アラン著、伊藤英嗣訳『U2 世界の涯てまでも』(1994・大栄出版)』▽『ビル・グラハム著、川原真理子訳『U2全曲解説』(1995・シンコー・ミュージック)』▽『和久井光司著『U2』(1999・エクシード・プレス)』