内科学 第10版 の解説
Wiskott-Aldrich症候群(原発性免疫不全症候群)
概念・病因
血小板数と血小板サイズの減少,T細胞の機能異常とアトピー性皮膚炎,多糖抗原に対する抗体産生の障害がみられる免疫不全症で,X染色体上のWASP遺伝子の異常が原因である.
臨床症状
血小板減少による出血傾向,アトピー性皮膚炎,細菌,真菌,ウイルスに対する易感染性.
検査成績
血小板数減少と血小板サイズの減少が特徴である.細胞性免疫の異常を呈し,血清IgM低値を認め,IgEは高値をとることが多い.
診断
男児で血小板減少,アトピー性皮膚炎,免疫不全症の3主徴を伴う症例に,WASP蛋白の欠損または遺伝子異常を認める.
合併症
自己免疫疾患や悪性リンパ腫の合併の頻度が高い.軽症型でWASP蛋白が存在するものでは,伴性血小板減少症の表現型をとる.
予後
根治療法が行われないと,頭蓋内出血,悪性腫瘍,重症感染症のため予後不良.
治療
摘脾が血小板減少に有効である.根治療法として造血幹細胞移植がある.[峯岸克行]
■文献
Notarangelo LD, Fischer A, et al: Primary immunodeficiencies: 2009 update. J Allergy Clin Immunol, 124: 1161-1178, 2009.
Ochs HD, Smith CIE, et al: Primary Immunodeficiency Diseases, 2nd ed, Oxford University Press, New York, 2007.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報