X線光電子分光(読み)エックスセンコウデンシブンコウ

化学辞典 第2版 「X線光電子分光」の解説

X線光電子分光
エックスセンコウデンシブンコウ
X-ray photoelectron spectrometry

略称XPSまたはESCA(エスカ,electron spectroscopy for chemical analysis).試料にX線を照射し,試料から放出される光電子の運動エネルギーを精度よく測定して,試料の表面分析を行う方法.照射するX線のエネルギーを E0 とし,放出される光電子の運動エネルギーを

(1/2)mv2(mは電子の質量vは電子の速度)
とすると,この差

E0 - (1/2)mv2
が放出された電子の試料中における結合エネルギーとなる.結合エネルギーは元素に特徴的であるから,試料中の元素の特定ができる.また,結合状態によって結合エネルギーに微小な変化があるから,元素の酸化状態などに関する情報も得られる.水素を除くすべての元素の同定定量,および状態分析が可能である.透過力が強い軟X線を励起源としているため,非破壊で分析ができる.放出される光電子は試料中で自由行程が非常に短いので,試料表面層の分析が可能である.ただし,固体に限られる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のX線光電子分光の言及

【電子分光】より

…光照射による方法を光電子分光photoelectron spectroscopy(略称PES)という。そのうちX線によるものをX線光電子分光X‐ray photoelectron spectroscopy(略称XPS),紫外線によるものを紫外光電子分光ultraviolet photoelectron spectroscopy(略称UPS)と呼ぶ。XPSは化学分析に用いられることが多いので,ESCA(エスカ)(electron spectroscopy for chemical analysisの略称)と呼ばれることがある。…

※「X線光電子分光」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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