一重項状態(読み)イチジュウコウジョウタイ

デジタル大辞泉 「一重項状態」の意味・読み・例文・類語

いちじゅうこう‐じょうたい〔イチヂユウカウジヤウタイ〕【一重項状態】

原子分子の全電子スピン量子数が0の状態。電子のスピンが反平行(平行で逆向き)で、スピン角運動量が打ち消しあい、スピン多重度は1となる。もっともエネルギーが低い安定した基底状態は、おなじ最低軌道にスピンが反平行な二電子が入ることで実現する。→三重項状態

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関連語 パウリ

化学辞典 第2版 「一重項状態」の解説

一重項状態
イチジュウコウジョウタイ
singlet state

多電子原子や分子の全電子のスピン量子数の和(合成スピン角運動量S)が0である状態.この状態の多重度(2S+1)は1なので,一重項状態といわれる.偶数個の電子からなる分子の基底状態は,組立て原理パウリの原理にもとづいて,電子を低いエネルギー準位の軌道から順に帰属していくことによってつくられるが,このとき,同じ空間軌道に入る電子は互いに反平行スピンをもつようになるので,S = 0で,一重項状態になる場合が多い.最高被占軌道が縮退している場合や,奇数個の電子からなる分子の基底状態は,多重度が大きくなる.[別用語参照]三重項状態

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の一重項状態の言及

【三重項状態】より

…炭素原子や酸素原子のいちばん安定な基底状態は三重項状態である。窒素分子や二酸化炭素のように多くの分子は,すべての電子が対をなしている一重項状態であり,第一励起状態が三重項間にあるが,酸素分子のように三重項状態のほうが安定な分子もある。一重項と三重項間の遷移は一般に起こりにくい。…

※「一重項状態」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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