銀証連携(読み)ぎんしょうれんけい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「銀証連携」の意味・わかりやすい解説

銀証連携
ぎんしょうれんけい

銀行と証券会社による業務・サービスの連携の総称規制緩和で銀行業と証券業の業務の垣根が低くなったのを受けたもので、銀証融合とよぶ場合もある。銀行と証券会社相互の顧客紹介、行員・社員の交流による業務の高度化や顧客サービスの向上、共同店舗の運営、銀行と証券業務にまたがる金融商品の開発などを通じ、ビジネスの相乗効果をあげる取組みである。銀行にとっては株式、投資信託、外国債券などの運用関連商品を預金者らに紹介し、顧客の利便性を向上できる利点がある。一方、証券会社にとっては、圧倒的に多い銀行の支店網を利用でき、預金者が預貯金の一部を投資へ振り向けることが期待できるうえ、銀行の融資力やM&A(企業合併・買収)のノウハウを法人営業に活用できる。

 かつては銀行と証券会社の業務を厳しく分けてきた(銀証分離)。しかし、1993年(平成5)の子会社方式による相互参入や国債・社債の銀行窓口での販売解禁皮切りに、持株会社方式での銀行・証券子会社の保有、銀行による投資信託の窓口販売解禁や株式の取次ぎ解禁、上場企業などの顧客の非公開情報の共有規制(ファイアーウォール規制)の緩和役員の兼務解禁などが進んだ。とくに銀証連携はインターネット金融機関で先行している。ネット銀行とネット証券の口座を連動し、ネット預金の一部を投資資金として自由に使える預金商品が誕生したほか、銀行と証券の口座を同じ画面上で管理し、銀行と証券会社の残高合計が多いほど預金金利が高くなるサービスも生まれている。2009年(平成21)には三井住友フィナンシャルグループが三大証券の一角である日興コーディアル証券(現、SMBC日興証券)を傘下に収めたことで銀証連携が加速。2013年以降の株式相場の上昇もあって、地方銀行や地場証券会社などが銀証連携する動きが相次いでいる。しかし、2022年(令和4)、三井住友銀行とSMBC日興証券が企業の非公開情報を無断で共有し、金融庁から業務改善命令を受けたことで、さらなるファイアーウォール規制の緩和には慎重論がでている。

[矢野 武 2023年2月16日]

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