アウブ(読み)あうぶ(英語表記)Max Aub

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アウブ」の意味・わかりやすい解説

アウブ
あうぶ
Max Aub
(1903―1972)

スペインの小説家、劇作家。ドイツ人を父に、フランス人を母としてパリに生まれる。フランスで初等教育を受けたあと、1914年両親とともにスペインに移住し帰化した。スペイン内戦では共和国側を支援し、内戦後国外亡命を余儀なくされた。フランス、アルジェリアを経て1940年ごろメキシコに居を定め、亡くなる年までこの地で文学活動を続けた。代表作としては、スペイン内戦をテーマにした小説集『魔術迷宮』があり、これは『閉ざされた野』(1943)、『血の野』(1945)、『開かれた野』(1951)、『モーロの野』(1963)、『アーモンドの野』(1968)の五つの作品からなる。演劇作品にも、ナチス・ドイツのユダヤ人迫害を扱った『聖ヨハネ』(1943)など優れた作品が多い。

[東谷穎人]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アウブ」の意味・わかりやすい解説

アウブ
Aub, Max

[生]1903.6.2. パリ
[没]1972.7.24. メキシコシティー
スペインの小説家,劇作家。ドイツ人の父とフランス人の母の間に生れ,11歳でスペイン国籍を得た。内乱終結直前にパリに亡命,1942年以後メキシコに住んだ。初期の小説『ルイス・アルバレス・ペトラーニャ』 Luis Alvarez Petraña (1929) や戯曲ナルシス』 Narcis (28) はダダシュルレアリスムの影響が濃いが,内乱以後の作品は社会参加的な傾向が強い。代表作は内乱中の体験に基づいた連作『魔の迷路』 El laberinto mágico (43~68) ,架空の画家の伝記『ジュセップ・トレス・カンパランス』 Jusep Torres Campalans (58) 。

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