トミヨ(読み)とみよ(英語表記)Chinese ninespine stickleback

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トミヨ」の意味・わかりやすい解説

トミヨ
とみよ / 富魚
Chinese ninespine stickleback
[学] Pungitius spp.

硬骨魚綱トゲウオ目トゲウオ科に属する淡水魚または汽水魚。背びれに7~10本の棘(とげ)があることで特徴づけられる。従来のトミヨPungitius sinensisがトミヨ属淡水型、トミヨ属汽水型、およびトミヨ属雄物型の3種に分けられたが、和名、種名ともに与えられていない。トミヨ属淡水型には、体側の鱗板(りんばん)が体側面の胸部から尾柄(びへい)部まで連続して並ぶ完全型と、連続して並ばない不完全型があり、太平洋側では岩手県以北、日本海側では福井県以北の本州と北海道の水の澄んだ細流、池沼などに生息する。トミヨ汽水型は鱗板が不完全型のみで、北海道東部の琵琶(びわ)瀬川と別当賀(べっとが)川の河口域に生息する。トミヨ属雄物(おもの)型は鱗板が不完全型のみで、秋田県雄物川と山形県最上(もがみ)川水系の水の澄んだ細流、池、沼などにすむ。

 トミヨ属の魚は体が灰黄色で背面は青黒く、体側に暗色横帯がある。ゆるやかに流れる小川の中・下流域および池沼の冷水域を好む。水草の多いところにすみ、小型の甲殻類ユスリカ幼虫などを食べる。産卵期は春~夏で、雄は水草に草でゴルフボール大の巣を作り、求愛ダンスをして雌を巣に導き入れ、産卵させる。雄は胸びれを使って新鮮な水を送って卵を世話し、仔魚(しぎょ)が巣を離れるまで保護する。体長は5センチメートルになる。寿命は約1年半。

 近縁種エゾトミヨは背びれの軟条部直前の棘は短くて、眼径の58%以下であることで区別できる。

 従来、鱗板が胸部または尾柄部にあることで特徴づけられていたイバラトミヨ(別名キタノトミヨ)は独立種ではなくなり、トミヨに統合された。

 環境省のレッド・リスト(2013)ではエゾトミヨは準絶滅危惧種に指定されている。ムサシトミヨは東京都では絶滅し、埼玉県では絶滅危惧ⅠAに指定されている。京都府、兵庫県、大阪府にいたミナミトミヨは湧水域の細流の消失によって絶滅した。

[尼岡邦夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トミヨ」の意味・わかりやすい解説

トミヨ
Pungitius sinensis

トゲウオ目トゲウオ科の淡水魚。全長 5cm内外。体はやや紡錘形で側扁し,背鰭前方に通常8~9本のとげがある。体側に骨板の列が1列あるか,あるいはこれを欠く。真の鱗はない。体は青褐色で不規則な斑紋をもつ。雄は水草などを集めて巣をつくる性質があり,水の澄んだ細流にすむ。おもに北日本に分布する。

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改訂新版 世界大百科事典 「トミヨ」の意味・わかりやすい解説

トミヨ

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世界大百科事典(旧版)内のトミヨの言及

【トゲウオ(棘魚)】より

…また,大型の肉食魚や水鳥類の天然餌料として重要であるほか,ジョウチュウ(条虫)類やセンチュウ(線虫)類などの宿主としても知られ,ときに高い寄生率を示す。 トゲウオ科は5属に分かれ,日本には背びれに3本のとげをもつイトヨ属Gasterosteusと,このとげが7~13本のトミヨ属Pungitiusとが生息する。この2属は海で成長して春の産卵期に川にさかのぼるものと,一生淡水中で生活するものとを含み,生活圏が大きくなるためか,ともに分布範囲がきわめて広い。…

※「トミヨ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」