ボーデン(Nina Bawden)(読み)ぼーでん(英語表記)Nina Bawden

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ボーデン(Nina Bawden)
ぼーでん
Nina Bawden
(1925―2012)

イギリスの作家。ロンドンに生まれる。オックスフォード大学卒業後、教育映画、判事などの仕事に携わり作家活動に入る。児童文学と大人向けの作品を交互に発表。初期の児童文学は冒険物語の色合いが強かったが、『帰ってきたキャリー』(1973)で自身の学童疎開の体験に基づき、第二次世界大戦時にロンドンからウェールズ谷間の村に疎開した多感な少女キャリーを主人公に子供の目線でとらえた社会を描き出した。この作品で登場人物の個性的な描写、心理描写の精密さ、筋(すじ)運びの巧みさを生かした豊かな物語性という作風を確立し、カーネギーおよびガーディアン両児童文学賞有力候補作となった。BBC放送で放映もされた。『ペパーミント・ピッグのジョニー』(1975)では父親失業や子豚のジョニーとの交流を通して人生の哀歓を知っていく子供たちの姿を描きガーディアン賞を受賞した。『帰ってきたキャリー』の後日談『砦(とりで)の町の秘密の反乱』(1978)では地中海小国クーデターにかかわっていく子供たちを、『闇(やみ)の中のデービッド』(1982)では謎の若者がもたらす恐怖や不安を描く。『家族さがしの夏』(1989)では2人のおばさんに育てられている少女ジェーンが父親が再婚してできた子供たちにこっそり会いに出かけ、幼いころの恐ろしい出来事を思い出す。これらの作品で子供であるがゆえに体験する恐れや憎しみ感情を作品世界に描き込み、リアリズム児童文学の一つ方向性を打ち出した。

[佐藤凉子]

『松本亨子訳『帰ってきたキャリー』(1977・評論社)』『松本亨子訳『ペパーミント・ピッグのジョニー』(1978・評論社)』『宮下嶺夫訳『闇の中のデービッド』(1986・評論社)』『西村醇子訳『家族さがしの夏』(1998・国土社)』『小玉知子訳『おばあちゃんはハーレーにのって』(2002・偕成社)』『松本亨子訳『砦の町の秘密の反乱』(評論社・てのり文庫)』『デヴィッド・リーズ著、白坂麻衣子訳『物語る人びと――英米児童文学18人の作家たち』(1997・偕成社)』

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