自由貿易帝国主義(読み)じゆうぼうえきていこくしゅぎ(英語表記)imperialism of free trade

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自由貿易帝国主義」の意味・わかりやすい解説

自由貿易帝国主義
じゆうぼうえきていこくしゅぎ
imperialism of free trade

1953年 J.ギャラハと R.ロビンソンの共同論文によって提出された概念自由貿易主義帝国主義共存あるいは前者後者の機能を代替するような歴史的事態をさす。特に世界で最初産業革命を経験したイギリス資本主義が,自由貿易原則を唱導し実践しながらも,実はその生産力における優位を盾に自国経済成長に適合するような国際関係や世界経済を創造しようとしたという見解を提示している。

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世界大百科事典(旧版)内の自由貿易帝国主義の言及

【国際経済学】より

…それは,ヨーロッパ中枢における機械制大工業の成立によって,工業国と原料供給地との政治的・経済的結びつきが強化されたことの帰結であった。中枢側からみて,内には自由主義的であった自由貿易も,外からみれば他民族に加えられた抑圧でもあったのである(自由貿易帝国主義free trade imperialism)。しかし,この歴史段階では,中枢部の産業資本的蓄積が円い地球を商品・金融的にさらに円環化しながらも,なお資本制的生産様式は世界市場に組み込まれた大多数の地域の表層にとどまり,深部に達することはなかった。…

【小イギリス主義】より

…しかし,この考え方が反対派の少数意見ではなく,むしろ多数派=主流派の見解となったのは19世紀前半から中葉にかけて,イギリスのみが工業化され,圧倒的な生産力を誇った時代である。この時代のイギリスでは,政治的=領土的な支配を避けて行政経費を節約しながら,経済的には支配を貫徹するという〈自由貿易帝国主義〉が主流となったからである。〈非公式帝国主義〉とも呼ばれるこの政策のもとで,19世紀前半,南アメリカの大部分の国が事実上イギリスの経済的支配下に入った。…

【帝国主義】より

…この膨張は急激に行われたにもかかわらず,本国の政界では緊急の課題とは意識されなかった。また,本国の自由主義的改革の時期と重なっていたために旧来の帝国という言葉のもつ専制政治のイメージに合わないこともあって,1950年代に歴史家によって〈自由貿易帝国主義〉と呼ばれるまで,人々の強い関心を引かなかったのである。
【帝国主義の時代】
 1880年から第1次大戦にいたる期間は,〈帝国主義の時代〉と呼ばれることが多い。…

【帝国主義論】より

…レーニンによれば,帝国主義の特徴は商品生産が少数の巨大独占企業に集中化され,あわせて銀行の集中も進行する点にあり,これは資本主義経済の生産の無政府性を薄めてその組織化を導くかにみえるが,この組織化傾向は一時的なものにとどまり,帝国主義列強は世界市場の再分割を武力に訴えて強行せざるをえず,これが資本主義経済の崩壊の必然性を示しているというのである。 以上のような古典的〈帝国主義論〉に対して,それらは多様な要因からなる現実の帝国主義を説明できないとして,〈自由貿易政策〉の時代にもみられる外交政策を介しての間接的,非公式な影響力,支配力をも帝国主義として認識すべきだとするロビンソンRonald Robinson(1920‐ ),ギャラガーJohn Gallagher(1919‐80)の〈自由貿易帝国主義〉論や,不均等な経済発展がもたらす国内の利害対立を外部に発散させ,国内の一体化を図る経済政策として帝国主義を理解すべきだとするセンメルBernard Semmel(1928‐ ),ウェーラーHans Ulich Wehler(1931‐ )らの〈社会帝国主義〉論が近年の研究に大きな問題を提起している。帝国主義【野口 建彦】。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」