生産力(読み)セイサンリョク(その他表記)productive force

デジタル大辞泉 「生産力」の意味・読み・例文・類語

せいさん‐りょく【生産力】

物質的財貨生産しうる力。労働力生産手段とが一定生産関係を通じて結合することによって生み出される。

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精選版 日本国語大辞典 「生産力」の意味・読み・例文・類語

せいさん‐りょく【生産力】

  1. 〘 名詞 〙 物質的財貨を生産する力。労働力と生産手段とが一定の生産関係を通じて結合することによって生み出される。
    1. [初出の実例]「外交とは科学的莫大の生産力を相殺するに付ての販路の拡張なり」(出典:一年有半(1901)〈中江兆民〉附録)

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改訂新版 世界大百科事典 「生産力」の意味・わかりやすい解説

生産力 (せいさんりょく)
productive force

狭義には経済社会を構成する個々の部面(産業,企業,工場など)での生産能力あるいは労働の生産性のことをいうが,一般的には人間の社会生活に必要な種々の生産物の社会的供給能力,いわゆる社会的生産力の意味で用いられる。人類社会の発展はこのような社会的生産力の発展によって支えられており,生産力の発展水準が社会発展の度合を規定しているといってよい。広い意味での社会的生産力の水準を規定するのは,労働力の質および量,機械化の進展に代表される生産技術の発達の程度,労働力と生産手段の社会的質量編成,利用可能な資源性能とその賦存状況,さらに生産物市場,労働市場,金融市場を含むいわゆる市場機構の発達水準,およびこれらすべてにかかわる科学的知識の質と量などである。

 生産力の上昇には質的な面と量的な面がある。社会的供給能力の増大は新技術の導入など生産性の上昇によるだけでなく,技術水準不変のままでの生産の量的拡大によっても生じており,現実には両者が分かちがたく絡みあっている。ともあれ全体としての社会的生産力は短期的には変動,停滞しながら,歴史的には一貫して上昇してきた。資本主義成立後の産業構造高度化の過程,軽工業から重化学工業の時代へ,さらに経済のソフト化,ハイ・テクノロジー時代の到来は,社会的生産力の上昇が驚くべき速さで進んでいることを示している。しかし生産力の上昇は人類に物質的豊かさをもたらした反面,公害,資源・エネルギー危機など深刻な問題をも惹起した。

 マルクス主義およびマルクス経済学では,生産力を社会的生産力ととらえ,特有の重要な規定が与えられる。すなわち不断に上昇する生産力が,やがてはそれまでそれを包摂しその発展を促進してきた旧来生産関係(生産手段の所有関係)を破壊し,新しい生産関係を形成せしめる。社会革命の起爆力になるというのである。
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百科事典マイペディア 「生産力」の意味・わかりやすい解説

生産力【せいさんりょく】

人間の心身の生産能力,労働手段と労働対象,科学技術など,労働生産性の高さを決定する主観的・客観的要素の総体。生産関係とともに生産様式の一側面をなす。生産諸力のうち創造能力を備える労働力が最重要。
→関連項目史的唯物論

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生産力」の意味・わかりやすい解説

生産力
せいさんりょく
productive force; Produktivkraft

一般的には物財を生産しうる力を意味するが,マルクス経済学においては,生産関係とともに生産様式を構成する一側面として,歴史の推移を説明する基本的概念の一つとされている。 K.マルクスは『経済学批判』の序文で簡単な説明を与えた以外,生産力,生産関係の両者について特に記述しているわけではないが,今日一般的にとられている解釈によれば,生産力の構成要素は,生産手段と労働力とであり,これら要素が一定の方式で結合されて現実に生産の作用を行うようになったとき,それを生産力と呼ぶ。

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世界大百科事典(旧版)内の生産力の言及

【生産関係】より

…マルクス主義およびマルクス経済学に特有の基本概念である。広義の生産関係は社会的生産力を構成する個々の契機の社会的相互関係であり,生産物市場,労働市場,金融市場などにおける現実的諸関係を含むが,それらはすべて生産における人間相互の関係によって根本的に規定されているから,生産関係の基軸は生産手段に対する人間の関係,すなわち生産手段の所有関係であるとされる。さらに,歴史的に実在する生産関係は原始共同体,奴隷制,封建制,資本主義,社会主義の五つであり,資本主義社会は生産手段の所有者(資本家,土地所有者)階級が生産手段をもたない直接生産者(賃金労働者)階級を支配し,社会的生産の直接的担い手である労働者が資本家階級のために剰余価値を生産する,いわゆる階級社会,それも最後の階級社会であると説かれる。…

※「生産力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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