日本大百科全書(ニッポニカ) 「農書(中国の書名)」の意味・わかりやすい解説
農書(中国の書名)
のうしょ
中国の書名。固有名詞として「農書」とよばれるものに二つあり、一つは宋(そう)代の陳旉(ちんふ)の著作(1149)であり、他は元代の王楨(おうてい)の著作(1313)である。前者は三巻よりなり、上巻が耕種、中巻が畜牛、下巻が養蚕で、華中の農業について述べた内容である。後者は30巻余からなる大部のもので、一般に『農書』といえばこれをさす。内容は「農桑通訣(つうけつ)」六巻、「農器図譜」10巻余、「穀譜」数巻である。著者の王楨は山東省の人で、「農桑通訣」では華北の畑作および華中の稲作について述べ、「穀譜」では従来の作物のほかにコウリャン、ワタが付け加えられている。農具について詳しく、その後の諸書に多く引用されている。日本の農書はこの書に大きな影響を受けている。
[福島要一]