日本大百科全書(ニッポニカ) 「β遮断薬」の意味・わかりやすい解説
β遮断薬
べーたしゃだんやく
β-blocker
交感神経のβ受容体を遮断する作用を有する薬剤。β受容体はβ1、β2、β3のサブタイプに分類されており、β1受容体は心機能亢進(こうしん)(心収縮力増強、心拍数増加など)、β2受容体は気管支弛緩(しかん)、血管弛緩、胃腸管弛緩、グリコーゲン分解促進、β3受容体は脂肪分解促進、血管弛緩などの作用に関与している。
臨床現場で使用されるβ遮断薬には、心臓選択性(β1)、内因性交感神経刺激作用(ISA:intrinsic sympathomimetic activity。交感神経興奮時にはβ遮断作用、非興奮時にはβ刺激作用を発揮)、血管拡張作用を有するα(アルファ)遮断作用、親水性・親油性、作用持続時間などにより薬剤ごとの特性があり、大きくβ1選択性、β1非選択性およびα遮断作用をあわせもつαβ遮断薬に分類されている。
おもに循環器系疾患の治療薬(血圧降下薬、狭心症治療薬、心不全治療薬、抗不整脈薬)として使用されているが、一部の薬剤(チモロールマレイン酸塩など)が点眼剤として、眼科系疾患の治療薬(緑内障・高眼圧症治療薬)にも使用されている。
[北村正樹 2025年8月19日]