化学辞典 第2版 「アジポニトリル」の解説
アジポニトリル
アジポニトリル
adiponitrile
hexanedinitrile.C6H8N2(108.14).NC(CH2)4CN.ナイロン66の製造に用いられる重要な中間体.現在,工業的に下記3種類の原料ルートでその大部分が合成されている.
(1)1977年に工業化された方法で,ブタジエンと青酸を銅-マグネシウムクロマイト触媒により気相で反応させ,主生成物として3-および4-ペンテンニトリルを得,これをニッケル系錯体触媒により,さらにシアン化水素酸と液相で反応させてアジポニトリルとする.
(2)シクロヘキサンの酸化で得られるアジピン酸にアンモニアを反応させて,生成するアジピン酸アンモニウムをリン酸系触媒で脱水する方法がもっとも一般的に行われている.
(3)プロペンのアンモ酸化で得られるアクリロニトリルを電解二量化還元する方法が工業化されている.
2CH2=CHCN + H2 → NC(CH2)4CN
無色の液体.融点2.6 ℃,沸点295 ℃.0.962.1.4377.メタノール,エタノール,クロロホルムに可溶,水に可溶.水素化するとヘキサメチレンジアミンとなり,これとアジピン酸を縮重合してナイロン66が製造される.用途の大部分はナイロン製造用であるが,一部さび止め剤,ゴムの加硫促進剤の製造中間体としても用いられる.経口的には,ほかのシアン化合物と同様な劇毒であるが,呼吸的には蒸気圧も低く,経皮的にも危険性は少ない.[CAS 111-69-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報