アジピン酸(読み)アジピンサン(その他表記)adipic acid

デジタル大辞泉 「アジピン酸」の意味・読み・例文・類語

アジピン‐さん【アジピン酸】

adipic acid白色結晶性固体。工業的にはシクロヘキサン酸化して製する。エタノール熱水に溶ける。ナイロンなどの合成原料化学式HOOC(CH24COOH

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精選版 日本国語大辞典 「アジピン酸」の意味・読み・例文・類語

アジピン‐さん【アジピン酸】

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Adipinsäure の訳語 ) ナイロンの原料。化学式 HOOC(CH2)4COOH シクロヘキサノール硝酸で酸化することで得られる無色の結晶性固体。合成繊維可塑剤(かそざい)、合成潤滑油の製造原料などにも用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アジピン酸」の意味・わかりやすい解説

アジピン酸
あじぴんさん
adipic acid

鎖式の飽和ジカルボン酸の一つで、1,4-ブタンジカルボン酸、ヘキサン二酸の別名をもつ。

 シクロヘキサノールないしはシクロヘキサノンを、バナジン酸アンモニウムなどを触媒として硝酸により酸化して合成する。アジポニトリル加水分解によってもつくられる。無色の柱状結晶で、水にわずかに溶け、水溶液は酸性を示す。エタノール(エチルアルコール)、アセトンにはよく溶けるが、エーテル、炭化水素溶媒にはほとんど溶けない。加熱すると無水アジピン酸になる。カルシウム塩を乾留するとシクロペンタノンを生成する。ナイロン66の原料として重要であるほか、ポリエステル樹脂の原料としても用いられる。アジピン酸とオクチルアルコールデシルアルコールなどとのジエステルは可塑剤や合成潤滑油としての用途をもつ。

[廣田 穰]


アジピン酸(データノート)
あじぴんさんでーたのーと

アジピン酸
  HOOC(CH2)4COOH
 分子式  C6H10O4
 分子量  146.1
 融点   153℃
 沸点   337.5℃
 溶解度  1.5g/100g(水15℃)
 解離定数 K1=5.5×10-5
      K2=9.3×10-6

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改訂新版 世界大百科事典 「アジピン酸」の意味・わかりやすい解説

アジピン酸 (アジピンさん)
adipic acid

飽和ジカルボン酸の一種で,天然に存在する種々の脂肪の加水分解によって得られることからこの名がつけられた(ラテン語adipisは脂肪の意)。化学式HOOC(CH24COOH,融点153℃の無色柱状結晶。エチルアルコールに易溶,アセトン,熱水,熱酢酸に可溶,水から再結晶できる。水にわずかに溶けて酸性を呈する。高温に加熱すると脱水を起こし,反応条件によってアジピン酸無水物または重合体無水物を生じる。実験室ではシクロヘキサノールを硝酸で酸化して合成できるが,工業的にはシクロヘキサンの触媒による空気酸化で製造される。ナイロン66など合成繊維の原料,アルキド樹脂ポリエステル樹脂の原料として用いられ,またオクチルアルコールやデシルアルコールなどの高級アルコールとのジエステルは可塑剤として利用される。分析化学上は,酸の一次標準物質としてアルカリ標準液の標定に用いる(当量73.07)。
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化学辞典 第2版 「アジピン酸」の解説

アジピン酸
アジピンサン
adipic acid

hexanedioic acid.C6H10O4(146.14).HOOC(CH2)4COOH.二塩基酸の一種.シクロヘキサノールシクロヘキサノン,あるいはシクロヘキサンの酸化分解で得られる.アジポニトリルの加水分解によっても得られる.単斜柱状晶.融点153 ℃,沸点205 ℃(1.3 kPa),265 ℃(13 kPa).Ka1 253.76×10-5.エタノール,アセトンに可溶,エーテルにはほとんど不溶.ナイロン66の重要な製造原料,そのほかポリアミド繊維,アルキド樹脂,ポリエステル樹脂,可塑剤,医薬品などの合成原料としても大きな用途がある.LD50 1900 mg/kg(マウス,経口).[CAS 124-04-9]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アジピン酸」の意味・わかりやすい解説

アジピン酸
アジピンさん
adipic acid

1,4-ブタンジカルボン酸のこと。化学式 HOOC(CH2)4COOH 。6,6-ナイロンの合成原料として重要である。シクロヘキサノールの硝酸酸化によるか,シクロヘキサンから直接,あるいはシクロヘキサノンを経て,空気または酸素で酸化してつくられる。融点 153℃,単斜柱状晶。水には難溶,エチルアルコールに易溶,エーテルにはほとんど不溶。高温に加熱すると脱水してアジピン酸無水物の重合体を生成し,ヘキサメチレンジアミンと縮重合して6,6-ナイロンを生成する。高級アルコールとのエステルは可塑剤として使われ,潤滑油添加剤の合成原料でもある。また,酸の標準物質としてアルカリ標準液の標定に用いられる。

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百科事典マイペディア 「アジピン酸」の意味・わかりやすい解説

アジピン酸【アジピンさん】

化学式はHOOC(CH24COOH。無色の結晶。融点153℃。熱水,アルコール,アセトンに可溶。ナイロンの製造原料として重要。工業的にはシクロヘキサンから触媒を用いた何段階かの酸化により製造される。

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栄養・生化学辞典 「アジピン酸」の解説

アジピン酸

 C6H10O4(mw146.14). HOOC(CH2)4COOH.ナイロンやポリエステルの原料にする.食品添加物として酸味料,品質改良剤,膨張剤などに使う.

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