日本大百科全書(ニッポニカ) 「アジピン酸」の意味・わかりやすい解説
アジピン酸
あじぴんさん
adipic acid
鎖式の飽和ジカルボン酸の一つで、1,4-ブタンジカルボン酸、ヘキサン二酸の別名をもつ。
シクロヘキサノールないしはシクロヘキサノンを、バナジン酸アンモニウムなどを触媒として硝酸により酸化して合成する。アジポニトリルの加水分解によってもつくられる。無色の柱状結晶で、水にわずかに溶け、水溶液は酸性を示す。エタノール(エチルアルコール)、アセトンにはよく溶けるが、エーテル、炭化水素溶媒にはほとんど溶けない。加熱すると無水アジピン酸になる。カルシウム塩を乾留するとシクロペンタノンを生成する。ナイロン66の原料として重要であるほか、ポリエステル樹脂の原料としても用いられる。アジピン酸とオクチルアルコール、デシルアルコールなどとのジエステルは可塑剤や合成潤滑油としての用途をもつ。
[廣田 穰]