アジピン酸(読み)あじぴんさん(英語表記)adipic acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アジピン酸」の意味・わかりやすい解説

アジピン酸
あじぴんさん
adipic acid

鎖式の飽和ジカルボン酸の一つで、1,4-ブタンジカルボン酸、ヘキサン二酸の別名をもつ。

 シクロヘキサノールないしはシクロヘキサノンを、バナジン酸アンモニウムなどを触媒として硝酸により酸化して合成する。アジポニトリル加水分解によってもつくられる。無色の柱状結晶で、水にわずかに溶け、水溶液は酸性を示す。エタノールエチルアルコール)、アセトンにはよく溶けるが、エーテル、炭化水素溶媒にはほとんど溶けない。加熱すると無水アジピン酸になる。カルシウム塩を乾留するとシクロペンタノンを生成する。ナイロン66の原料として重要であるほか、ポリエステル樹脂の原料としても用いられる。アジピン酸とオクチルアルコールデシルアルコールなどとのジエステルは可塑剤や合成潤滑油としての用途をもつ。

[廣田 穰]


アジピン酸(データノート)
あじぴんさんでーたのーと

アジピン酸
  HOOC(CH2)4COOH
 分子式  C6H10O4
 分子量  146.1
 融点   153℃
 沸点   337.5℃
 溶解度  1.5g/100g(水15℃)
 解離定数 K1=5.5×10-5
      K2=9.3×10-6

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アジピン酸」の意味・わかりやすい解説

アジピン酸
アジピンさん
adipic acid

1,4-ブタンジカルボン酸のこと。化学式 HOOC(CH2)4COOH 。6,6-ナイロンの合成原料として重要である。シクロヘキサノールの硝酸酸化によるか,シクロヘキサンから直接,あるいはシクロヘキサノンを経て,空気または酸素で酸化してつくられる。融点 153℃,単斜柱状晶。水には難溶,エチルアルコールに易溶,エーテルにはほとんど不溶。高温に加熱すると脱水してアジピン酸無水物の重合体を生成し,ヘキサメチレンジアミン縮重合して6,6-ナイロンを生成する。高級アルコールとのエステルは可塑剤として使われ,潤滑油添加剤の合成原料でもある。また,酸の標準物質としてアルカリ標準液の標定に用いられる。

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