アンモ酸化(読み)アンモさんか(英語表記)ammoxidation

改訂新版 世界大百科事典 「アンモ酸化」の意味・わかりやすい解説

アンモ酸化 (アンモさんか)
ammoxidation

有機化合物にアンモニア酸素(または空気)を作用させ,ニトリルを製造する目的の化学反応をいう。プロピレンからのアクリロニトリル合成反応はその代表的な例である。

ほかにメタンのアンモ酸化によるシアン化水素青酸)合成も知られている。

 このアクリロニトリル合成反応は1960年にスタンダード・オイル・オブ・オハイオ社Standard Oil Co.of Ohioによって最初に工業化されソハイオ法Sohio processと呼ばれ,またこの時に用いられた触媒モリブデンおよびビスマスの複合酸化物とリンを主要成分とするもので,ソハイオ触媒と呼ばれた。その後,同様の原理を用いながらも触媒系や反応器形式の異なる種々の方法が開発されて現在に至っている。アンモ酸化反応は大きな発熱反応であるため,ソハイオ法では触媒微粒子を流動床方式で使用することにより,反応熱の除去と反応温度の制御を容易にしている。反応温度は450~500℃,プロピレン:空気:アンモニアのモル比は1:11:1.15,反応時間2~10秒,圧力1.5気圧である。生成物はアクリロニトリルのほか,アセトニトリルCH3CN,シアン化水素などがあり,またプロピレンの完全酸化反応(燃焼)も起こりがちである。触媒や反応操作の改善,工夫によってアクリロニトリルの生成選択性はしだいに向上し,現在はアクリロニトリル1kgあたりアセトニトリル0.025kg,シアン化水素0.05kgを副生するにすぎない。

 メタンのアンモ酸化によるシアン化水素合成はアンドルソフ法Andrussow processとも呼ばれる。触媒としては白金または白金-ロジウム合金が用いられ,800~1000℃の高温下で反応を行う。原料ガスは爆発範囲を避けるようその混合比が調整される。反応は10⁻9~10⁻8秒というきわめて短時間に完結するが,生成ガス中のシアン化水素濃度が低く,回収操作が難しい。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「アンモ酸化」の解説

アンモ酸化
アンモサンカ
ammoxidation

原料有機物をアンモニアと空気(または酸素)とともに適当な触媒上を通して,主としてニトリルを得る反応をいう.代表的な例としては,プロペンをリンモリブデン酸ビスマスなどを触媒とし,流動層反応塔で500 ℃ 以下,3 atm 以下で反応してアクリロニトリルとするソハイオ法と,メタンを白金網を触媒とし,約1000 ℃ で反応させシアン化水素とするアンドリュッソー法がある.アンモ酸化の触媒としては,アルケンにはMoおよびSb系が,芳香族にはⅤ系が,そしてアルカンにはⅤ,Sb,Mo系の各複合酸化物が開発されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android