改訂新版 世界大百科事典 「アズマガヤ」の意味・わかりやすい解説
アズマガヤ (吾妻茅)
Asperella longe-aristata (Hack.) Ohwi
山林の中に見るイネ科の多年草で,全体の形はややカモジグサに近い。和名は産地の一つ,福島県吾妻山にちなむ。茎は短い根茎から単生または2~3本まばらに叢生(そうせい)し,高さは60~80cm,数節がある。葉は幅の狭い披針形で,長さは10~20cm,幅は2cmほどで,中央以下でねじれて葉の裏が表に出るいわゆる裏葉となる。葉の表は淡い緑色,裏は濃緑色である。夏に茎の頂に長さ10~15cmの細い穂状花序1本を出し,上部は垂れて毛のある中軸上に断続して小穂をつけ,カモジグサのようになる。小穂は1節に1~2個あり,長さは10mmくらいの披針形で,1個または2個の小花があり,長さ1~2cmの芒(のぎ)がある。苞穎(ほうえい)はオオムギに見られるように退化して刺針状になり,小花脱落後も花穂の軸上に残着する。日本と朝鮮半島南部の特産種で,北海道から九州まで分布するが,比較的まれである。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報