日本大百科全書(ニッポニカ) 「アダピス」の意味・わかりやすい解説
アダピス
あだぴす
Adapis
新生代第三紀始新世(約5400万年前から3700万年前)に属する化石霊長類の1科。食虫類と霊長類の接点にあるプレシアダピスと異なり、眼窩輪(がんかりん)が形成されている。現生のキツネザルと同系のものとみられているが、下顎(かがく)の切歯、犬歯は前傾せずキツネザルのような櫛歯(しっし)になっていない。体はハツカネズミからネコの大きさまでさまざまである。眼窩が比較的小さく、鼓室輪が耳胞内にある点はキツネザルに似る。前後肢の母指は他の指から離れ、開いている。ヨーロッパと北アメリカから多数出土している。例外はあるが、前者出土のものをアダピス亜科、後者出土のものをノタルクトゥス亜科として2大別できる。アダピスとは「アピス(エジプトの聖牛)となるべきもの」の意。
[香原志勢]