日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊豆長岡」の意味・わかりやすい解説
伊豆長岡
いずながおか
静岡県東部、田方郡(たがたぐん)にあった旧町名(伊豆長岡町(ちょう))。現在は伊豆の国市西部を占める一地区。観光と温泉の盛んな地域で、狩野(かの)川中流左岸にある。旧伊豆長岡町は、1934年(昭和9)町制施行。1954年(昭和29)江間(えま)村を編入。2005年(平成17)韮山(にらやま)町、大仁(おおひと)町と合併、市制施行して伊豆の国市となる。伊豆箱根鉄道、国道136号バイパス、同414号、伊豆中央道が通じる。気候は温暖。南北西三方を山で囲まれ、凝灰岩質の急傾斜地にミカン、カキの樹園が点在。中央を南北に丘陵地が走り、東端を狩野川が北に流れる。1958年の狩野川台風は大被害をもたらしたが、墹之上(ままのうえ)から江浦(えのうら)湾(沼津市)に出る狩野川放水路が1965年に完成。狩野川流域は肥沃(ひよく)で水田地帯をなし、園芸、花卉(かき)、果樹栽培が盛んである。最近ではイチゴ狩りやミカン狩りなどの観光農業も盛んで、伊豆長岡温泉もあり、田園観光都市を目ざしている。南江間に1930年(昭和5)北伊豆地震の記念物である「地震動の擦痕(さっこん)」(国指定天然記念物)がある。また、北江間横穴群から発見された若舎人の石櫃(わかとねりのせきひつ)は国の重要文化財。そのほか、散歩によい源氏山(げんじやま)公園や、北条時頼(ときより)の墓、源三位頼政(げんざんみよりまさ)の愛妾(あいしょう)菖蒲前(あやめのまえ)が草庵(そうあん)を結んだ弥勒(みろく)堂などがある。1月28日のヌエ払(はらい)祭、7月初めの源氏あやめ祭は有名。葛城(かつらぎ)山の山頂までロープウェーが通じ、眺望に優れる。
[川崎文昭]
『『伊豆長岡町史』全3巻(1996~2005・伊豆長岡町)』