日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハツカネズミ」の意味・わかりやすい解説
ハツカネズミ
はつかねずみ / 二十日鼠
mouse
[学] Mus musculus
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ネズミ科の動物。野生種はヨーロッパからアフリカ北部、アジアにかけて生息するが、現在では人間と共生して、世界中に広く分布する。頭胴長7~10センチメートル、尾長6~11センチメートル。体色は、野生種では上面が黄褐色、下面が白色であるが、家住性のものは灰褐色から暗褐色、黒色など多様で、下面は白色でない。上顎(じょうがく)門歯の先端後面にくぼみがある。日本では、夏は野外の畑や草原にすみ、冬は住居に侵入するが、都市部の高層建築には周年すむ。植物の種実や穀物を主食にするが、昆虫や貝などなんでも食べる。繁殖期は春と秋で、年に3~4回出産するが、餌(えさ)が豊富にあると周年繁殖可能になる。妊娠期間は20日で、1グラムほどの赤裸な子を4~6頭産む。子は生後5日目に開耳し、7日目に発毛、9日目に門歯が生え始め、11日目に開眼する。性成熟は、雄では生後1か月、雌では2か月ごろ。飼育下での寿命は2年半ぐらいである。
本種の畜用品種には、愛玩(あいがん)用として中国産の野生ハツカネズミM. m. wagneriからすでに紀元前に作出されていた小形のナンキンネズミ、内耳の遺伝的な奇形でこまのように回転するコマネズミ(マイネズミ)、ヨーロッパハツカネズミM. m. domesticusから20世紀初頭に作出された実験用動物のマウスなどがある。日本では、江戸時代に愛玩用マウスの飼育が流行し、『珍翫鼠育艸(ちんがんそだてぐさ)』という飼育解説書が出版された(1787)ほどであった。
[土屋公幸]