ハツカネズミ(その他表記)mouse
Mus musculus

改訂新版 世界大百科事典 「ハツカネズミ」の意味・わかりやすい解説

ハツカネズミ (二十日鼠)
mouse
Mus musculus

マウスとも呼ばれ,齧歯(げつし)目ネズミ科に属する。原産地は地中海地方からアジア中部,中国に至る地域と考えられているが,現在では熱帯から極地まで人間の住むところのすべてに分布。体長6.5~9.5cm,尾長6~10.5cm,体重12~30g。体背面灰褐色で,腹面は野生または半野生の亜種では純白色,住家生のものでは背面よりわずかに淡色人家やその周辺の田畑原野森林にすみ,夜も昼も45~90分を周期に活動する。何でも食べる雑食性で,食物への適応力が高く,一年中氷点下で日照のない状態でも生活でき,温度に対する適応力も高い。ほぼ一年中繁殖し,妊娠期間は19~20日。屋内では年に5~6回出産し,1産5~6子がふつう。穀物貯蔵庫では年に8~10回出産する。子は閉眼で無毛だが,18日で離乳し,6週間後には繁殖を始める。寿命は3年だが飼育下では6年の記録がある。

 家畜化されたものは実験用や愛玩用とされ,体色は白や黒などさまざまで,全身無毛の〈ヌードマウス〉まである。これらのものは,ヨーロッパ産の亜種が家畜化されたものといわれる。中国で家畜化されたものはナンキンネズミと呼ばれ,それをもとに日本で作られた品種の一つにコマネズミマイネズミ)がある。これは生来的に三半規管奇形をもつもので,こま(独楽)のように平面をくるくる回る習性がある。
実験動物
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハツカネズミ」の意味・わかりやすい解説

ハツカネズミ
はつかねずみ / 二十日鼠
mouse
[学] Mus musculus

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ネズミ科の動物。野生種はヨーロッパからアフリカ北部、アジアにかけて生息するが、現在では人間と共生して、世界中に広く分布する。頭胴長7~10センチメートル、尾長6~11センチメートル。体色は、野生種では上面が黄褐色、下面が白色であるが、家住性のものは灰褐色から暗褐色、黒色など多様で、下面は白色でない。上顎(じょうがく)門歯の先端後面にくぼみがある。日本では、夏は野外の畑や草原にすみ、冬は住居に侵入するが、都市部の高層建築には周年すむ。植物の種実や穀物を主食にするが、昆虫や貝などなんでも食べる。繁殖期は春と秋で、年に3~4回出産するが、餌(えさ)が豊富にあると周年繁殖可能になる。妊娠期間は20日で、1グラムほどの赤裸な子を4~6頭産む。子は生後5日目に開耳し、7日目に発毛、9日目に門歯が生え始め、11日目に開眼する。性成熟は、雄では生後1か月、雌では2か月ごろ。飼育下での寿命は2年半ぐらいである。

 本種の畜用品種には、愛玩(あいがん)用として中国産の野生ハツカネズミM. m. wagneriからすでに紀元前に作出されていた小形のナンキンネズミ、内耳の遺伝的な奇形でこまのように回転するコマネズミ(マイネズミ)、ヨーロッパハツカネズミM. m. domesticusから20世紀初頭に作出された実験用動物のマウスなどがある。日本では、江戸時代に愛玩用マウスの飼育が流行し、『珍翫鼠育艸(ちんがんそだてぐさ)』という飼育解説書が出版された(1787)ほどであった。

[土屋公幸]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ハツカネズミ」の意味・わかりやすい解説

ハツカネズミ

齧歯(げっし)目ネズミ科の哺乳(ほにゅう)類。体長6.5〜9.5cm,尾6〜10.5cm。体色は灰褐色,褐色,黒色など変化に富む。ほとんど世界中に分布。人家内や付近の農耕地にすみ,穀物,野菜,昆虫などを食べる。ふつう1腹4〜17子。体が小さいので,大型のイエネズミの侵入しにくいビル街に進出している。本種の畜用種にナンキンネズミやヌードマウスなどがある。
→関連項目イエネズミコマネズミネズミ(鼠)マウス(動物)

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハツカネズミ」の意味・わかりやすい解説

ハツカネズミ
Mus musculus; house mouse

齧歯目ネズミ科。体長6~10cm,尾長5~10cmの小型のネズミで耳が大きい。体色は灰色,黒色であるが,白化種もある。野生のものは西アフリカ,旧ソ連南部などに分布するが,住家性のものはほとんど全世界の人家および農耕地にすみ,夏は屋外に,冬は屋内にいることが多い。楕円形の巣を,屋外では堆積物の下などに,屋内ではたんすのうしろや倉庫の片隅などに,紙,ぼろ布,わらなどを細かく裂いてつくる。年中繁殖し,1回に平均9子を産む。また実験動物として広く使われ,ペットとして飼われることもある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

小学館の図鑑NEO[新版]動物 「ハツカネズミ」の解説

ハツカネズミ
学名:Mus musculus

種名 / ハツカネズミ
科名 / ネズミ科
日本にいる動物 / ◎
解説 / 寿命は平均で100日ほどです。都市よりも、農村の納屋やこく物の倉庫などで多く見られます。
体長 / 5.8~9.2cm/尾長4.8~7.4cm
体重 / 12~20g
食物 / 主に種子
分布 / 世界に広く分布。日本では北海道から沖縄まで

出典 小学館の図鑑NEO[新版]動物小学館の図鑑NEO[新版]動物について 情報

栄養・生化学辞典 「ハツカネズミ」の解説

ハツカネズミ

 →マウス

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のハツカネズミの言及

【イエネズミ(家鼠)】より

…人家およびその付近の農耕地などにすみ,人間社会に半ば寄生して生活するネズミ。ふつうドブネズミクマネズミハツカネズミの3種を指す。これに対し,山野などの自然環境下で野生生活をおくるネズミをノネズミ(野鼠)という。…

※「ハツカネズミ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android