キツネザル(読み)きつねざる(英語表記)lemur

翻訳|lemur

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キツネザル」の意味・わかりやすい解説

キツネザル
きつねざる
lemur

哺乳(ほにゅう)綱霊長目キツネザル科に属する動物の総称。また、より広義にはキツネザル科とインドリ科を含むキツネザル上科全体、またはキツネザル上科にアイアイ上科を加えたキツネザル下目のすべてをさす。さらにまた、狭義にはキツネザル科のなかでとくにキツネザル亜科、あるいはキツネザル属に含まれる種のみをさす。ここではキツネザル科以下の範囲で解説する。キツネザル科Lemuridaeの原猿は、マダガスカル島とその周囲の小島、およびコモロ諸島に分布する。キツネザル亜科Lemurinaeとコビトキツネザル亜科Cheirogaleinaeに二分され、前者はキツネザル属Lemur(マカコキツネザル、マングースキツネザル、ワオキツネザルなどのグループ)、ジェントルキツネザル属HapalemurイタチキツネザルLepilemurの3属を、後者はコビトキツネザル属Cheirogaleus、フォークキツネザル属Phaner、ネズミキツネザル属Microcebusの3属を含む。小さいものは小形のネズミぐらいで、大形の種は中形のイヌほどの大きさがある。鼻口部は突出し、鼻は無毛で湿っており、耳介は大きい。ふさふさした長い尾をもち、四肢には把握力がある。後肢第2指には鉤(かぎ)づめがあるが、ほかの指はすべて平づめをもつ。大部分の種は歯式は

で歯数は36本であるが、イタチキツネザルは上顎(じょうがく)門歯を欠き32本しかない。キツネザル亜科は昼行性の傾向が強く、コビトキツネザル亜科は夜行性である。また、夜行性の種には単独生活者が多く、昼行性の仲間には、家族的な群れや、複数の雄と雌を含む20頭以上の群れをつくるものがある。多くの種が、尿や糞(ふん)、あるいは皮脂腺(ひしせん)からの分泌物を木の枝などに塗り付けて、縄張りの維持と結び付いたマーキング行動を示す。乳首は1~3対で、1産の子数は1頭ないし2、3頭と幅がある。食性は一般に雑食であるが、葉食性や果実食性の傾向の強いものもあり、種ごとに異なる。

[上原重男]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キツネザル」の意味・わかりやすい解説

キツネザル
Lemuridae; lemur

霊長目キツネザル科の動物の総称。全長 30~123cm (尾を含む) 。体には毛が密に生え,体色は赤灰褐色ないし黒色で,斑紋や縞をもつものもある。眼が大きく,尾は長い。鼻孔のまわりに,毛のない裸出した鼻鏡がある。樹上または地上で生活し,雑食性。キツネザル亜科とコビトキツネザル亜科に分けられ,キツネザル属 Lemur,ジェントルキツネザル属 Hapalemur,イタチキツネザル属 Lepalemur,コビトキツネザル属 Cheirogalemur,ネズミキツネザル属 Microcebusなどから成る。マダガスカル島とコモロ諸島に分布し,乾燥した落葉樹林や熱帯雨林に生息する。

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