改訂新版 世界大百科事典 「アビナバグプタ」の意味・わかりやすい解説
アビナバグプタ
Abhinavagupta
インドの思想家。生没年不詳。ヒンドゥー哲学の一派として9世紀ころにインドのカシミール地方で成立したシバ派(カシミール・シバ派)の最も代表的な思想家で,10世紀末に活躍した。主著の一つ《イーシュバラ・プラティアビジュニャー・ビマルシニー(主宰神の再認識の考察)》は,シバ神と各個我との同一性を再認識することにより解脱に達すると説くこの派(別名,再認識派)の不二一元論的思想の発展に大きく貢献した。そのほかタントラ教については《タントラローカ》およびその要約《タントラサーラ》を著し,詩論,舞踊論などの方面にも優れた業績を残した。彼の著書は61冊にものぼると言われ,10世紀のインドにおける最大の学者の一人。
執筆者:丸井 浩
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報