日本大百科全書(ニッポニカ) 「アフタル」の意味・わかりやすい解説
アフタル
あふたる
al-Aal
(640ころ―708ころ)
アラブの詩人。イラクの両河地方に生まれ、生涯を通じてキリスト教徒であった。アフタルとはあだ名で「耳の垂れ下がっていること」をいう。幼少のころ母を失い、継母に育てられたが、真の母性愛に恵まれず、この継母を恨む詩を書き始め、飲酒にふけるようになった。のちにウマイヤ朝をたたえる詩をつくり、これに接した第5代カリフのアブドゥル・マリクは、彼を案内してダマスカス市中をパレードし最大級の賛辞を呈するよう部下に命じた。こうして宮廷との関係が生まれ、桂冠(けいかん)詩人となったが、遊牧民としての血は彼をしばしば砂漠へと駆り立て、部族抗争に身を投じた。ファラズダク、ジャリールらとともに、ウマイヤ朝の詩人として傑出した地位を占める。
[内記良一]