ジャリール(その他表記)Jarīr ibn `Aṭiyyah

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャリール」の意味・わかりやすい解説

ジャリール
Jarīr ibn `Aṭiyyah

[生]?
[没]728/729. ヤマーマ
アラブの詩人アフタルファラズダクと並び,ウマイヤ朝時代を飾った詩人で,後世までのアラブ詩界のなかで,一流の大家と評価されている。特に風刺詩にすぐれ,ファラズダクとは多年にわたり互いに詩をもって戦ったが,その原因は両者の属する部族間の争いにあったという。のちダマスカスに出て,時のカリフ (アブドゥル・マリク,ワリード1世,ウマル2世,ヒシャームら) の宮廷に出入りしたが,晩年は領地のあるアラビアのヤマーマに戻り,そこで 80歳ほどで世を去った。その「ディーワーン」 (個人詩集) は9世紀前半にムハンマド・イブン・ハビーブによって編纂された。ファラズダクをはじめ数十人の詩人その他をそしった風刺詩が大部分を占めているが,賛美の詩や哀歌などにもすぐれたものがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャリール」の意味・わかりやすい解説

ジャリール
じゃりーる
Jarīr
(640―728)

ウマイヤ朝時代のアラビアの代表的詩人。アラビア半島中部に生まれたが、イラクの有力な総督アル・ハッジャージにみいだされ、総督をたたえる詩をつくる。この賛嘆詩句が強烈であったため、教王(カリフ)のアブドゥル・マリクが総督をうらやんだほどであった。だが、ほどなく教王にも目をかけられ、以後、教王や高官たちをたたえた多くの詩をつくる。しかし同時代の詩人ファラズダクとの間に競争関係が生まれ、両者は生涯を通じて相手を非難する詩をつくり続けた。この2人にさらにアフタルを加えてウマイヤ王朝三大詩人とよばれる。非難詩(ヒジャー)とよばれる領域において、アラブ文学史上最高の詩人の一人。

[内記良一]

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世界大百科事典(旧版)内のジャリールの言及

【アラブ文学】より

…政治詩ではイスラムはもとより,そのなかでもウマイヤ朝,シーア派,ハワーリジュ派などをそれぞれ支持する詩人が輩出した。これらのなかで重要なのはアフタルal‐Akhṭal(640ころ‐710),ファラズダクal‐Farazdaq(640ころ‐732ころ),およびジャリールJarīr(?‐733ころ)である。3人ともウマイヤ家の保護のもとにジャーヒリーヤの部族主義的な手法を用いて政争にかかわった。…

※「ジャリール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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