アブラガヤ（その他表記）Scirpus wichurai Böcklr.

改訂新版　世界大百科事典

アブラガヤ
Scirpus wichurai Böcklr.

沼沢地や河原の湿地に見る大型のカヤツリグサ科の多年草。茎は短く太い根茎から立ち上がり，まばらな株を作り，高さ1m以上となって，数個の節がある。節は茶色で，節間が黄色っぽく光沢があり，油があるかに見えるので油茅という。葉は茎の根もとと節につき，長く伸びた線形で，幅は1cmくらいである。夏の終りから秋に向かって，茎の上部に大型の散形花序を出し，数回枝分れしながら，茶色で楕円形の小穂をきわめて多数密生する。小穂は長さ6mmくらい，小型で褐色の鱗片が多数つく。果実は微小で，6本の長く縮れた糸状の刺針があり，果実が熟すと刺針は多少鱗片からはみ出して，小穂から毛が出ているように見える。日本全国で見られ，変化に富み変種が多いが，種全体としては中国からインドシナ北部やヒマラヤ山地まで分布している。近縁種にクロアブラガヤS.sylvaticus L.ssp.maximowiczii （Regel） T.KoyamaやマツカサススキS.mitsukurianus Makinoなどがある。
執筆者：小山 鐵夫

図－アブラガヤ

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

日本大百科全書(ニッポニカ)

アブラガヤ
あぶらがや / 油萱
油茅
[学] Scirpus wichurae Böckler

カヤツリグサ科（APG分類：カヤツリグサ科）の多年草。高さは約1メートルだが、1.5メートルほどになるものもある。夏から秋にかけて茎の先に大きな花序をつけ、褐色の小穂が散房状につく。成熟した果実は風に吹かれて散っていく。日当りのよい山地の湿地に生え、群生することが多い。日本各地にみられ、東アジアに広く分布する。変異が大きく、いくつかの変種や品種に分けられることもある。名は、小穂が油色で、油のにおいがするためといわれる。

［木下栄一郎　2019年7月19日］

アブラガヤ

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)