日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブラスギ」の意味・わかりやすい解説
アブラスギ
あぶらすぎ / 油杉
[学] Keteleeria davidiana (Bertrand) Beiss.
マツ科(分子系統に基づく分類:マツ科)の常緑針葉高木で、大きいものは高さ40メートル、直径2.5メートルにも達する。別名ユサン、テッケンユサン、シマモミ、カタモミ。樹皮は暗灰褐色で不規則に縦裂する。幼枝は赤褐色で綿毛が密生する。葉は扁平(へんぺい)な線状披針(ひしん)形で2縦列につき、長さ2~4センチメートル、幅3~4ミリメートルあり、表面は深緑色でやや光沢がある。裏面は緑色または蒼白(そうはく)色で柔らかく光沢があり、先は鈍形または鋭形で多少裏面に巻き込む。雌雄同株。球果は単一、円筒形で、直立し、長さ5~10センチメートル、径4.0~4.5センチメートル。初め淡紅色、ついで緑色、10月ごろ熟して栗(くり)色となる。種子は帯黄淡褐色でくさび形をなし長さ1.2~2.0センチメートルあり、長い翼がある。中国中西部、インドシナに分布し、日本には大正初期に渡来し、暖地に試植されている。材は帯黄褐色でもろくて弱いが、油分に富み耐朽力が強く、建築、土木用材、器具などに使う。また暖地で庭園樹、公園樹とする。名は、材に油分が多いことによる。中国名は油杉または鉄堅杉。
[林 弥栄 2018年5月21日]