『アメリカン・マインドの終焉』(読み)アメリカン・マインドのしゅうえん

大学事典 の解説

『アメリカン・マインドの終焉』
アメリカン・マインドのしゅうえん

アラン・ブルーム,A.(Allan Bloom,1930-92)の著作。1987年,シカゴ大学の政治学者ブルームが,現代の専門主義的な大学教育の不毛とプラトンへの回帰の必要を論じて,ベストセラーとなった大学教育論。ブルームによれば,現代の大学と大学生の窮状の理解には,古代アテナイと啓蒙の17~18世紀とを比較せねばならない。ソクラテス理性的な探求を続ける中で,慣習巣窟としての市民社会と衝突し圧殺された。2000年後の17~18世紀,啓蒙の到来は史上初めて市民社会の全員に理性的な探求を期待し,ソクラテスとともに一度は滅びた「大学の魂」が公然と蘇るかに見えた。しかしそうした夢は1960年代,啓蒙を理性の解放ではなく,かえって人間の自由の鉄の檻への収監である,と指弾したニーチェ左派の学生たちによって破砕された。ブルームは,今や大学人にできるのはただ一つ,啓蒙への幻想に惑わされることなく,ソクラテスが見いだした理性的な探求と市民社会との対立という大学のリアルな原点へ,プラトンの古典を通して立ち戻ることだと主張する。1988年,みすず書房刊。菅野盾樹訳。
著者: 立川明

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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