改訂新版 世界大百科事典 「アラカルフ」の意味・わかりやすい解説
アラカルフ
Alacaluf
チリ南部,南緯47°30′あたりからフエゴ島の西にある島々にかけて住む土着民族。アンデス山脈南端の氷河が東に迫り,山麓は樹木が密生する多雨地帯である。一方,海岸は複雑なリアス海岸地形で,海には無数の島が浮かぶ。寒冷の気候と地形的条件のために農耕は不可能で,生業は漁労と狩猟が中心となる。貝やウニの採集,アザラシ,ウ,ペンギン,カモの狩猟が主で,ほかにイルカ,ラクダ科のグアナコ,魚,若干の野生植物の実などもとる。くりぬきカヌーと,ヤーガン族のものと同じ樹皮舟を用い,貝採り用の棒,槍,バスケット,銛,樹皮製のバケツといった,きわめて単純な物質文化しかもたない。つねに小さな集団で移動する生活で,家屋は半球形に細い木で枠を作り,アザラシなどの皮をかぶせただけのものである。調理は直火で焼くだけで,貯蔵その他複雑な技術や道具を用いない。人口は少なく,20世紀に入ってからは200~400人を数えるのみである。
執筆者:大貫 良夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報