改訂新版 世界大百科事典 「アリグモ」の意味・わかりやすい解説
アリグモ
Myrmarachne japonica
ハエトリグモ科のクモ。体長7~10mmで,黒褐色か赤褐色。形態や歩行動作がアリに似ているのでこの名がある。北海道を除く日本各地,台湾,朝鮮半島に分布している。網は張らず,木の葉や草の上を徘徊し,ユスリカなどの小昆虫を捕食する。雄は成熟すると上あごが長大となり前に突き出すが,繁殖期にはこれを雄どうしのディスプレーに使用する。6~7月に雌は葉裏に糸で産室をつくり,15~30個の卵を産む。産室と同様な住居をつくりその中で若虫で越冬する。本属のクモは世界中で百数十種おり,日本にはほかにヤサアリグモ,クワガタアリグモ,タイリクアリグモが記録されている。アリとの直接的関係は少なく,形や動作がアリに似ているのはアリを警戒する他の動物に対する擬態の例と考えられている。なお,ハエトリグモ科内のアリに似ているクモの総称としても,アリグモant-like spiderの名称が使われる。
執筆者:松本 誠治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報