改訂新版 世界大百科事典 「アレウト族」の意味・わかりやすい解説
アレウト族 (アレウトぞく)
Aleut
アメリカ合衆国,アレウト列島の先住民で,人口約5000(1970)。自称はウナンガンUnangan。ロシア領のコマンドル諸島にも500人(1979)がいる。人類学上はエスキモーとともにモンゴロイド人種の極北タイプに分類され,言語の面でも両者はきわめて近い親縁関係にある。そして,アレウト族の起源の問題は〈ベーリング陸橋〉を通じての新大陸への移住の問題,エスキモーの起源の問題と密接にかかわっている。列島海域が冬にも結氷しないという好条件に恵まれ,アレウト族の祖先は衣食住を海獣や海鳥の狩猟,魚介類の採取に依存する優れた海洋文化を生み出した。18世紀中葉のロシア人の入植当時,竪穴住居の部落には貧富の差,奴隷などの社会的な階層分化が認められた。物質文化では野生のライ麦の藁で編まれた美しいゴザ,籠や袋,円錐形でひさしの長い木製の男子用の帽子,獣皮や羽毛の貫頭衣が特徴的であった。19世紀以降アレウト列島では白人文化の影響が及び,また,コマンドル諸島では1917年のロシア革命以降社会主義的変革が行われた。
執筆者:荻原 真子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報