知恵蔵 「アレバ社」の解説
アレバ社
アレバ社は、1次エネルギー源を原子力に大きく頼るフランスの原子力産業のほぼ全ての領域を一手に掌握している。原子力発電プラント部門を担い三菱原子燃料の大株主でもある「Areva NP」、ウラン採掘、核燃料の加工・再処理を行い、ラ・アーグ再処理工場などを運用する原子燃料部門「Areva NC (旧コジェマ社)」、発電・送電プラント部門「Areva T&D」などを擁している。Areva NPの前身は、フランス電力公社(EDF)の原子炉プラントを独占的に受注してきたフラマトム社(Framatome)。後にドイツのシーメンス社(Siemens AG)の原子力部門を吸収し、合弁会社フラマトムANP(Framatome ANP)となった。現在はアレバ社の子会社Areva NPとなり、三菱重工業と業務提携関係を結んで、東芝グループ、日立-GE連合と並び、世界の原子力発電所建設市場の大半を制している。
アレバ社は日本の原子力業界と関係が深く、日本の電力会社の委託でプルトニウム・ウラン混合酸化物燃料(MOX)の加工を請け負っている。福島第一原子力発電所3号機のMOX燃料もアレバ社(当時コジェマ社)が加工・製造したもの。この他、相次ぐトラブルで本格稼働が延び延びになり、建設費用が数兆円にも増大した青森県六ヶ所村の日本原燃核燃料サイクル施設も、アレバ社の「技術協力」によるもの。
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故の自力解決を断念した東京電力は、11年3月末にCEA、EDF、アレバ社などに支援を要請。「アトミック・アンヌ」の異名を持つアンヌ・ローベルジョン社長兼CEO(当時)やサルコジ大統領が相次いで来日した。事故による放射性廃水処理について「世界で初めてのオペレーション」ながら「実績もあり技術的に処理は十分可能」などと主張するアレバ社提案による共沈の原理に基づいた設備が導入された。薬品を投入してセシウムやストロンチウムを水に溶けにくい塩として沈澱させ、取り除く方法だ。事故対策に税金投入が確実なのにもかかわらず、東京電力は導入決定の記者会見でアレバ社との契約を理由に汚染除去のデータ公表を渋り、同席した細野豪志首相補佐官の批判を浴びて方針を翻した。
こうしたいきさつや、アレバ社の処理方式である共沈法及び、同時に採用された「イオン特殊媒体」(米国のベンチャー企業キュリオン社が提案したゼオライトによるイオン交換法)は、水処理として目新しいものではなく、詳細内容も明らかにされていないことなどから、契約の経緯についての不透明さなども各方面から指摘され、東京電力の企業姿勢や原子力行政のありかたが問われている。
(金谷俊秀 ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報