沸石ともいう.結晶性アルミノケイ酸塩で,SiO2四面体とAlO2四面体とが三次元網目状に結合した鉱物.陽イオンを含み,この陽イオンは水溶液中でほかの陽イオンと容易に交換されるため,陽イオン交換体として利用される.また,構造中に比較的大きな空間があり,その入口径が分子の大きさに匹敵するため,分子ふるい作用を有する吸着剤として,さらに,触媒として多くの反応に利用されている.多くの天然および合成ゼオライトが知られており,結晶構造の相違,すなわち四面体の連結方法の相違により,7群に整理される.【Ⅰ】方沸石(analcime)群:代表例は,方沸石Na16Al16Si32O96・16H2O;立方晶系.十字沸石(harmotome)Ba2Al4Si12O32・12H2O;単斜晶系.灰十字沸石(phillipsite)(K,Na)10Al10Si22O64・20H2O;斜方晶系.そのほか,P型ゼオライト,ジスモンド沸石,湯河原沸石などがある.【Ⅱ】方ソーダ石(sodalite)群:代表例は,水和方ソーダ石Na6Al6Si6O24・7.5H2O;立方晶系.エリオナイト(erionite)(Ca,Mg,K2,Na2)4.5Al9Si27O72・27H2O;六方晶系.オフレタイト(offretite)(K2,Ca)2.7Al5.4Si12.6O36・15H2O;六方晶系.そのほか,T型ゼオライト,Ω型ゼオライト,レビーナイトなどがある.【Ⅲ】A型ゼオライト(zeolite A)群:代表例は,A型ゼオライトNa12Al12Si12O48・27H2O;立方晶系.そのほか,ZK-4型ゼオライト,N-A型ゼオライトなどがある.合成ゼオライトのみで天然物はない.【Ⅳ】ホージャサイト(faujasite)群:代表例は,ホージャサイト(Na2,K2,Ca,Mg)29.5Al59Si133O384・235H2O;立方晶系.X型ゼオライト(zeolite X)Na86Al86Si106O384・264H2O;立方晶系.シャバザイト(chabazite)Ca2Al4Si8O24・13H2O,六方晶系.そのほか,L型ゼオライト,Y型ゼオライト,グメリナイトなどがある.【Ⅴ】ソーダ沸石(natrolite)群:代表例は,ソーダ沸石Na16Al16Si24O80・16H2O;斜方晶系.メソ沸石(mesolite)Na16Ca16Al48Si72O240・64H2O;斜方晶系.そのほか,スコレス沸石,トムソン沸石などがある.【Ⅵ】モルデナイト(mordenite)群:代表例は,モルデナイトNa8Al8Si40O96・24H2O;斜方晶系.白沸石(epistilbite)Ca3Al6Si18O48・18H2O;単斜晶系.そのほか,ビキタイトなどがある.【Ⅶ】輝沸石(heulandite)群:代表例は,輝沸石Ca4Al8Si28O72・24H2O;単斜晶系.クリノプチロル沸石(clinoptilolite)Na6Al6Si30O72・24H2O;単斜晶系.タバ沸石(stilbite)Ca4Al8Si28O72・28H2O;単斜晶系.そのほか,ブリュースター沸石などがある.[別用語参照]ゼオライト触媒,ZSM-5型ゼオライト,モレキュラーシーブ
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
沸石のことであるが、ゼオライトというときは天然に産する沸石類だけではなく、人工的に合成したいわゆる人造沸石をも含めていう場合が多い。
沸石類は本来その特性からイオン交換体としての用途が注目され、1907年にドイツで初めて合成品もつくられ、合成ゼオライト(商品名パームチット)として市販され、主としてイオン交換体として用いられていた。しかしのちにはむしろ骨格構造の空孔(くうこう)の大きさを種々変えることにより、大きさに応じた分子を選択的に吸着する吸着剤として用いることの有用性が注目されるようになった。この種のゼオライトは「モレキュラーシーブ(分子ふるい)」とよばれ、たとえば、ゼオライトA(アメリカのリンデ社からリンデシーブ4Aとして市販)はNa12[Al12Si12O48]・NaAlO2・29H2Oで、0.4ナノメートルの空孔をもち、N2,O2,CH4,H2O,NH3などの分子を選択的に中に取り込む。ゼオライトAのカルシウム塩であるゼオライト5AはCa4Na4[Al12Si12O48]で、0.5ナノメートルの空孔があり、C14までのn‐パラフィン、n‐オレフィン、n‐アルコールを吸着するが、側鎖のある有機分子は吸着しない。このほかテトラメチルアンモニウム塩としたゼオライトNA Na4{(CH3)4N}3[Al7Si17O48]・21H2Oなどもあり、いろいろな大きさの空孔のものがつくられ、現在では工業的な規模で広く用いられてきている。また不均一系触媒反応に用いられる金属あるいは金属錯体の担体としても用いられる。
[中原勝儼]
(徳田昌則 東北大学名誉教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
… 液相均一触媒反応における水素イオンと同様の役割を,固体であって酸性を示す物質の表面が果たすことがあり,固体酸触媒と呼ばれる。酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合ゲルにあたるシリカ‐アルミナや,両者が特徴ある結晶構造をとるため反応分子を固体内部にとり込むことのできるゼオライトは,その代表例である。カルボニウムイオン中間体の生成が反応進行上の鍵となる。…
…低温加熱によって相当量の水分を放出するアルミノケイ酸塩鉱物の一群。ゼオライトともいう。化学成分はSiO2,Al2O3,アルカリ金属,アルカリ土類金属,さらにH2Oを含有し,立体網目状構造をもつ(テクトケイ酸塩に属する)。…
※「ゼオライト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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